ハリスが抱える〝弱点〟
一方、今後トランプ氏と直接対峙することになった場合、ハリス氏に弱点がないわけではない。そのひとつが、黒人であると同時に、女性であるという事実だ。
人種だけに限った場合、米国有権者の間では、すでにバラク・オバマ大統領誕生で経験済みであり、しかも、オバマ氏は再選を果たし、2期8年の任期を全うした実績がある。しかし、女性大統領を大半の有権者が迎え入れるだけの寛容性がすでに根付いているかどうかについては、いぜん疑問符がついたたままだ。
最近では、ヒラリー・クリントン女史が16年大統領選に民主党候補として出馬し、接戦ながらトランプ共和党候補に敗れた例が挙げられる。
いずれにしても、ハリス氏がこのまま来月党大会で正式に民主党候補に指名された場合、トランプ氏相手に大接戦となる公算は大きい。そして同氏にとっての今後の最大課題は、選挙戦を通じ「女性大統領」就任への有権者の根強い不安をいかに克服できるかにかかっている。
兜の緒を締めるトランプ陣営
有力雑誌「The Atlantic」電子版は22日付けで「これこそまさにトランプ・チームが危惧した事態」の見出しで、民主党候補が急遽、ハリス氏にさし変わったことで共和党選対本部が受けた衝撃ぶりについて、ティム・アルバータ担当記者による特報記事を掲載。その中で以下のような同党の内部事情を伝えている:
「筆者は共和党大会よりはるか前の去る3月5日、トランプ再選本部の共同議長であるクリス・ラビタ、スージー・ワイルド両氏に、『バイデン候補について何が脅威か』を直接尋ねた。その答えは『正直、バイデンについては恐れることはない。むしろ、個人ではなく、組織化された民主党の本番での結束だ』というものだった。『正直、今回のような大統領選では、組織力と結束力がモノを言うはずだが、バイデンが候補のままでは、かえってその阻害要因となっている』とも語った。(中略)事実、史上最高齢の大統領候補となったバイデン氏の衰えぶりは2023年からすでに悪化の兆候が顕著に見え始め、対するトランプ支持率は上昇し始めた。考えられなかった黒人、ヒスパニックの間でも共和党支持が広がり始めた。(中略)共和党内部では次第に楽観主義がはびこり始めた」
「ところが今や、そのバイデン氏が抜け落ち、代わりにハリス氏が登場してきたこと、そして、その直後から、民主党全体が組織として一体となって動き始めたことで、状況が一変した。22日に共和党幹部の何人かに反応を聞いたところ、一様に『ショックを受けた』ことを認めた。つい数日前まで、共和党選対本部内では、『大統領争奪レースは(トランプ勝利で)事実上、終わったも同然』といったムードが流れ、トランプ氏が正式指名候補として最後に登壇し党大会が大成功のうちに終了したことで、ほろ酔い加減の関係者も少なくなかった。ところが、試合は突如、ハリス氏が民主党の最有力候補となったことで振り出しに戻り、共和党は戦略を根本から見直さなければならなくなった」