2024年7月27日(土)

BBC News

2024年7月25日

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は24日、米連邦議会で演説した。ネタニヤフ首相は「我々の敵は皆さんの敵だ」と述べ、パレスチナ自治区ガザ地区での戦争への支持を得ようとした。議事堂内外では抗議活動が行われた。

「我々はイランと戦う時、アメリカ合衆国にとって最も過激で残忍な敵と戦っている」

「我々の敵は皆さんの敵であり、我々の勝利は皆さんの勝利になるだろう」

ネタニヤフ氏は、上下両院合同会議で4回目となる演説でそう述べ、主に共和党議員らから熱烈な歓迎を受けた。

しかし数十人の民主党議員が意図的に欠席したほか、議事堂前には数千人の抗議者が集まり、ガザでの戦争をめぐる政治的分裂が浮き彫りになった。

議事堂前に設置されたステージでは、ネタニヤフ氏を「指名手配中の戦争犯罪人」とする横断幕などが掲げられた。国連の国際刑事裁判所(ICC)の検察官は今年5月、ネタニヤフ氏を含むイスラエル閣僚とイスラム組織ハマスの指導者らに、戦争犯罪容疑で逮捕状を請求している

警察によると、ネタニヤフ氏の演説を妨害しようとした5人が議事堂内で逮捕された。

ネタニヤフ氏はデモ参加者に対し、「皆さんは正式にイランの役に立つばか者になった」と発言した。

ネタニヤフ氏は今回、イランに多く言及した。演説では、「テロの枢軸」がアメリカやイスラエル、アラブ世界を脅かしていると主張し、それを「文明対野蛮の衝突」と表現した。

この言葉は、イランが「抵抗の枢軸」と表現する、パレスチナのハマス、レバノンの武装組織ヒズボラ、イエメンを拠点とする武装組織フーシ派などを含む、中東全域にまたがる同盟を連想させるものだ。

ネタニヤフ氏はまた、イランの代理勢力がアメリカの標的を攻撃したと語り、イランは「アメリカに真に挑戦するには、まず中東を征服しなければならない」と考えていると付け加えた。

「しかし中東の中心には、イランの行く手を阻む、誇り高き親米民主主義国家がある。私の国、イスラエル国家だ」

ネタニヤフ首相は1時間以上にわたって演説。イスラエルへの批判をそらし、ガザでの戦争を自国の生き残りを賭けた戦いであるとし、アメリカのさらなる軍事援助を訴えた。

また、イスラエルに何十年もの間、「惜しみない軍事援助」を提供してきたアメリカに感謝するとともに、その見返りとしてイスラエルは「多くの命を救った」重要な情報をアメリカに提供してきたと付け加えた。

一方で、アメリカの軍事援助を「迅速に進める」プロセスを求め、そうすることでガザでの戦争の終結を早め、より広範な地域での戦争を防ぐことができると主張した。

そのうえで、第2次世界大戦中ウィンストン・チャーチル英首相がアメリカ国民に訴えた言葉を引用し、「道具をくれれば、仕事を終わらせる」と語った。

ガザ地区の人道危機にはほとんど触れず

ネタニヤフ氏は、イスラエルが1人あたり3000キロカロリーの食料を援助していると強調しただけで、ガザの人道危機については詳しく語らなかった。ガザの住民が食料を得られないとすれば、それは「ハマスが盗んでいるからだ」と述べた。

また、戦争後のガザ地区のビジョンとして、イスラエル軍の管理下にある「非武装化され、脱過激化された」飛び地にしたいと語った。

「ガザは、イスラエルを破壊しようとしないパレスチナ人によって運営される文民政権を持つべきだ。それほど大きな要求ではない」

ジョー・バイデン大統領と、11月の大統領選で民主党候補となる可能性が高いカマラ・ハリス副大統領が要求している、最終的な2国家解決策については、ネタニヤフ氏は言及しなかった。

数十人の民主党議員が欠席、各地で抗議も

ネタニヤフ氏の演説では何回かスタンディングオベーションが起こった。それでも、少なくとも39人の議員が演説を欠席した事実は覆い隠せなかった。

そのほとんどが民主党議員で、なかでも影響力のあるナンシー・ペロシ前下院議長は、ネタニヤフ首相の訪問は「不適切」だと述べた。

ハリス副大統領も出席しなかったが、別の予定があったためと報じられている。

パレスチナ系アメリカ人初の下院議員であるラシダ・トライブ議員(ミシガン州、民主党)は、ネタニヤフ氏の演説の最中、「ジェノサイド(集団虐殺)の罪」、「戦争犯罪人」と書かれたプラカードを掲げていた。

一方のネタニヤフ氏は、ドナルド・トランプ前大統領がホワイトハウスに戻る可能性を意識し、前大統領が在イスラエル米大使館をエルサレムに移転したことや、イスラエルが1967年に占領したシリア・ゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認したことについて、前大統領に感謝した。

両者は今週後半にフロリダで会談する予定だ。

こうしたなかイスラエル国内では、ガザで拘束されている人質の家族が集まり、テルアヴィヴの人質広場と呼ばれる中心部で、無音声で放送された演説を非難した。

国歌に耳を傾けた後、ネタニヤフ氏が画面上で演説を続けると、集まった人々は散り散りになった。

放送では音声は流れなかったものの、英語で行われた演説にはヘブライ語の字幕がついていた。

イスラエル軍はこの演説が終わった直後、ガザから人質となっていたマヤ・ゴレン氏とオレン・ゴールディン氏の遺体を回収したと発表した。数カ月に及ぶ人質交渉がいまだ実を結んでいない中、多くの人質家族が、愛する家族が生きている姿を再び見られるのかという絶望感を募らせている事実が浮き彫りとなった。

ハマスは昨年10月7日、イスラエル南部への前代未聞の襲撃を行い、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去った。

ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、その後に始まったイスラエルの軍事作戦により、これまでに3万9000人以上が殺害されている。

(英語記事 Netanyahu defends Gaza war as protesters rally outside US Congress

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ck7gpz8zxyno


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