2024年7月29日(月)

教養としての中東情勢

2024年7月29日

 首相との関係が冷却化しているバイデン氏は大統領選挙戦からの撤退により、再選に気を遣わずに政策に集中できるようになっており、首相に相当強く停戦を求めたもようだ。バイデン政権はこれまで、停戦に耳を貸そうとしない首相に圧力をかけるため、一部の大型爆弾の供与を凍結した経緯がある。バイデン氏の任期はまだ半年あり、首相は同氏の要求を無視できない。

 ハリス氏も首相と会談し、イスラエルの自衛権の支持を表明する一方で、ガザの民間人の被害について、ガザの悲劇を「座視しない」し、「沈黙することはない」などと発言。大統領に当選した場合は、イスラエルに対し、バイデン氏以上に強い姿勢で臨むことを示唆した。停戦を渋る首相に「釘を刺した」ものと受け取られている。

トランプとの関係は修復しても…

 この後、ネタニヤフ首相はフロリダまで足を運び、トランプ氏と会談した。トランプ政権時代、両者は親密な関係にあったが、首相が前回の選挙で勝ったバイデン氏に祝意を伝えたため、選挙結果を認めていないトランプ氏が激怒。「ネタニヤフに裏切られた」と忠誠心のなさを批判したと伝えられていた。

 この点を問われたトランプ氏は関係が悪かったことはないと取り繕った。大統領選で一騎打ちとなるハリス氏がネタニヤフ首相に厳しい姿勢を見せたことに対抗してか、首相との関係修復に舵を切ったとみられている。トランプ氏は会談前のインタビューで、ガザ戦争を迅速に終わらせることが必要だと述べており、首相にも伝えたもようだ。

 ネタニヤフ首相は米国から戦争への全面支持を直接取り付けたかったが、3人の指導者とも思惑がそれぞれ異なるにせよ、「早期終戦」を求めており、今回の訪米は「戦争続行」を目論む首相にとって成功とは言えない。皮肉なことに首相は訪米で重い宿題を得負わされることになった。

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