イスラエルは30日、レバノンの首都ベイルートの南郊を空爆し、イスラム教シーア派組織ヒズボラの最高幹部フアド・シュクル氏を殺害したと発表した。
イスラエル軍は、情報に基づいて戦闘機でシュクル氏を攻撃したと説明した。
シュクル氏の生死は不明。レバノンの治安筋は、攻撃された建物に同氏はいなかったとしている。ヒズボラはまだ声明を出していない。
イスラエル当局は、同国が占領するゴラン高原で27日にあったロケット砲攻撃を、シュクル氏が指揮したとしている。この攻撃では子どもを中心に12人が殺害された。
イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は30日の攻撃後、「ヒズボラは越えてはならない一線を越えた」と、ソーシャルメディアに投稿した。
ヒズボラは、ゴラン高原への攻撃への一切の関与を否定している。
レバノンのナジブ・ミカティ首相は、この日のベイルートへの攻撃について、「イスラエルのあからさまな攻撃」、「犯罪行為」だとし、「明白に国際法に違反している民間人殺害の軍事行動」だと非難した。
シュクル氏について米当局は、ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララ師の上級顧問だとみている。1983年にベイルートの米海兵隊兵舎が爆破され米兵241人が殺害された事件で「中心的な役割」を果たしたとし、シュクル氏の情報に500万ドル(約7億6200万円)の報奨金をかけている。
米ホワイトハウスのカリーン・ジャン=ピエール報道官は記者会見で、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルとヒズボラの大規模な戦争を回避可能だと考えていると説明。「事態のエスカレーションは見たくないし、全面戦争も見たくない」と述べた。
イスラエル軍は、国民に対して新たな避難指示を出す予定はないとし、ヒズボラがすぐに大がかりな反撃に出るとはみていないことを示唆した。
全面戦争の代償は双方とも認識している。全面戦争になれば、イランがレバノンの支援に乗り出す可能性もある。
ゴラン高原への攻撃の後、イスラエルが対抗措置を取ることは広く予想されていた。イスラエルの安全保障内閣は29日、報復に関する決定権を、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とガラント国防相に与えていた。
イスラエルとヒズボラの敵対関係は、昨年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃して以来、エスカレートしている。ゴラン高原への攻撃は、緊張が高まって以降で最も死者の多い出来事となった。
ヒズボラはハマスを支援しており、イスラエル北部のレバノン国境付近でイスラエルと砲撃し合うなどしている。
世界の指導者らは全面戦争への懸念から、ここ何日か自制を促している。
イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は30日、レバノンにいる英国民に対し、「紛争地帯に閉じ込められる」恐れがあるとし、直ちに国外に出るよう促した。
(英語記事 Israel claims it killed senior Hezbollah commander in strike on Beirut)