2024年7月31日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月31日

 ブルッキングス研究所欧米センター所長のステルツェンミュラーが、共和党で台頭している新たな政策ビジョンは、レーガン以来の伝統的な保守主義と真っ向から衝突するものだと、7月13日付フィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘Clash of the new Republican visions for America’s global role’で論じている。要旨は次の通り。

共和党で台頭している新たな政策ビジョンは副大統領候補のJDバンス氏も参画している(The Washington Post/gettyimages)

 共和党の「アメリカを再び偉大にする」(MAGA)陣営は、11月の勝利を嬉々として確信し、その用意ができているように見せたいと思っている。他方、保守派の対抗策もいくつか見られた。

 その目的は、MAGAの外交政策という怪しげな領域で自らの存在を確保すること、右派運動に規律を与え一貫性を示すこと、まともな外交政策の提案を行いより破壊的な国内政策アイデアから隔離すること、そして最も大胆なことに、党の気まぐれな候補者であるドナルド・トランプを封じ込めようとすることである。

 7月8日、ジョンソン下院議長はハドソン研究所でその見解を述べたが、党内対立の両サイド、すなわ即ち、中国を長期的な主要な課題とみなす北大西洋条約機構(NATO)支持のレーガン流の国際主義者と聖書を引用する強硬な現実主義のアメリカ第一主義者との間で巧みに立ち回った。

 その日、発表された共和党の綱領は、内容は曖昧であるが、「第三次大戦を阻止し、ヨーロッパと中東の平和を回復する」ことを約束した。最近の共和党の外交政策のほとんどすべてがそうであるように、レーガンの「力による平和」という呪文を引用している。

 しかし、このMAGAビジョンは、丘の上に輝く町や同盟国、市場及および市民社会に対する信頼といったレーガンの米国への信念とはほとんど共通点がない。それは、ミズーリ州共和党の上院議員ジョシュ・ホーリーが、NatCons(国民保守主義者)の会議でスピーチを行った際に述べたことに表れている。

 彼らは自分たちが西側の支配的な右翼運動としての地位を確立することを夢見ている。ホーリーは自らを「キリスト教ナショナリスト」と称し、今日の米国を西暦410年に西ゴート族に劫掠された西ローマ帝国になぞらえる。彼によればキリスト教徒は暗黒の時代に西側を主導することを託されたのだという。


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