2024年7月31日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月31日

 白人の男性議員が多数集まったこの会議の焦点は、外交政策ではなく、毒舌と被害者意識が入り混じったけたたましい言葉で、「悪者にされた」人々、即すなわち「白人、男性、キリスト教徒」の代表として、「政権」を痛烈に非難することであった。会議の最後に、オハイオ州選出のバンス上院議員(トランプの副大統領に指名)が、米国のウクライナ支援を批判し、移民が国家安全保障にとって最大の危険であると断じ、NatCon運動が勝利しトランプがその議長になるだろうと述べた。

 NatConはナショナリズム、反動的な社会政策、そして強権的な政府を融合させるもので、レーガンの対外介入主義、社会保守主義、自由放任経済学の「三本足の椅子」とは正反対である。そして、同じような動きは、NATOのヨーロッパ加盟国の多くでも主流派の政治に挑戦している。

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大統領選で改めて注目

 ステルツェンミュラーは、ブルッキングス研究所米欧センター所長で、その立場は、民主党主流派の考え方に近いものとみられる。この論説では、NATO首脳会議と同時期に開催されたNatCon(国民保守主義者)会議での、共和党のホーリー上院議員やバンス上院議員副大統領候補の主張を取り上げ、彼らの考え方はレーガン流の伝統的な保守派の政策とは正反対のものであるとして、トランプが政権を取る場合には、米国の国際的な役割が大きく変わることを警告している。

 レーガンの保守主義は、積極的な対外介入政策、社会的保守主義と経済的自由主義に特徴付けられるが、NatConの主張は、アメリカ第一主義で米国の利益が侵されない限り対外介入は行わず、社会政策ではキリスト教の影響を強く受け、経済面では製造業重視の保護主義である。

 米国の保守派の運動としては、「保守政治活動協議会(CPAC)」とこのNatCon(National Conservatism:国民保守主義)会議があるが、前者が全米の保守系政治家が年に1度集まる討論会であるのに対し、後者は、2019年に設立されたワシントンにあるエドマンド・バーク財団が主催するもので、新しい保守思想の形成を目的として欧州や米国で欧米の極右ポピュリストが参加する会合を定期的に開催している。

 同会議設立の際には、FOXニュースのカールソンや議員となる前のバンスも中心的メンバーとして関与しており、もしバンスが副大統領となれば、NatConの役割が改めて注目されることにもなろう。


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