大統領選の結果に対する抗議が続く南米ヴェネズエラの首都カラカスで30日、新たな抗議デモが起こった。
この日は数千人が市中心部に集まり、現職のニコラス・マドゥロ大統領の3選に抗議した。
抗議参加者の多くは、新政権が樹立されるまでは抗議をやめないとしている。また、治安部隊が抗議運動に参加しない限り、抗議を続けると主張する人もいる。
しかし、現時点では軍隊と警察はマドゥロ氏側についており、抗議者に催涙ガスやゴム弾で対応している。
当局によると、これまでに約750人が逮捕された。一方、ヴェネズエラの大手NGO2団体は、死者が数人出ているほか、数十人が負傷していると発表した。
こうした中、ヴラディミル・パドリノ国防相は30日、抗議活動を「クーデター」だと表現した。
パドリノ国防相は、部隊に囲まれながら声明を読み上げ、軍隊はマドゥロ大統領に「絶対的な忠誠と無条件の支援」を誓っていると語った。
同じくマドゥロ氏に近いタレク・サアブ司法長官は、兵士1人が反政府デモの中で殺されたと述べた。
その上で、逮捕された者は「権威への抵抗や、深刻なケースではテロの罪」で起訴されると警告した。
野党指導者のマリア・コリナ・マチャド氏は、平和な抗議を呼びかけた。
「我々は平和的に行動しなければならない。政府が仕掛けてきた挑発に乗せられるべきではない。政府はヴェネズエラ人同士を対立させようとしている」
また、「我々の候補者は70％の票を獲得した。かつてマドゥロを信じたヴェネズエラの人々は、今日、私たちと共にいる」と述べた。
反政府デモ参加者の一人は、選挙不正の証拠を見たとBBCに語った。この参加者は、治安部隊からの反発を恐れて名前を伏せている。
「選挙が盗まれたことは間違いない。私は選挙ブースで働いていた。政府はそれを認めず、夜半にすべての集計を止めた。自分たちが負けたことを世界に知られたくないのだ」
この参加者はまた、2013年に死去したウーゴ・チャヴェス前大統領を支持していた人々も、現在は後任のマドゥロ氏を支持しなくなっていると語った。
「これはとても平和的な抗議活動だ。ここはカラカスの上流階級の地域だ。だが昨日見たのはかなり暴力的だった。かつてチャヴィスタ（チャヴェス氏支持者）だった人々は、もはやチャヴィスタではないのだろう」
「人々は変化を望んでいる。おそらく暴力的なものになるだろう」
一方、市内の別の場所では、マドゥロ大統領の支持者が集まった。
集会に参加したナンシー・ラモネスさんは、「私は何も抗議していない。私は勝利した自分の政府を支持している。ニコラス・マドゥロだ。彼は平和を象徴する人物なので」と語った。
「野党が言っていることは証明されていない。不正があるというなら、それを証明しなければならない。不正は起きていない。彼らは常に隠された意図を持っている」
「これは許してはいけないクーデターだ。私たちは愛国者であり、ヴェネズエラ人であり、平和を愛している」
大統領選をめぐる抗議は28日、選挙管理委員会（CNE）のエルヴィス・アモロソ委員長がマドゥロ大統領の3選を発表したことで始まった。アモロソ委員長は、マドゥロ氏率いるヴェネズエラ統一社会党（PSUV）の党員で、かつて顧問だった。
CNEによると、マドゥロ氏の得票率は51％、野党の統一候補エドムンド・ゴンザレス氏が44％だった。
しかし、CNEはこれまでのところ詳細な開票結果を公表しておらず、野党側はCNEが発表した結果が不正であることを示しているとしている。
南北アメリカ諸国が参加する米州機構（OAS）も、ヴェネズエラ政府が結果を完全にねじ曲げていると非難している。
ゴンサレス氏を支持する野党連合は、73.2％の投票記録を確認することができたと述べ、大差でゴンサレス氏が勝利したと主張し続けている。
ゴンザレス氏は、「我々は、数学的に不可逆的な勝利を示す記録を持っている」と述べている。
しかしCNEは29日、全投票が集計され、マドゥロ氏が当選したと発表した。
ヴェネズエラの野党は、政府への不満が広がる中、11年間政権を維持してきたマドゥロ大統領を失脚させるべく、ゴンサレス氏を支持することで一致団結していた。
マドゥロ政権下では経済・政治危機を受け、これまでに約780万人が国外に逃れている。
国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、ヴェネズエラにおける緊張と暴力の高まりを深く懸念していると述べた。また当局に対し、すべてのヴェネズエラ国民が平和的に集い、抗議する権利を尊重するよう求めた。
（英語記事 Fresh protests in Venezuela as anger grows at disputed election result）
