2024年11月21日(木)

研究と本とわたし

2013年12月27日

――現在はどのような研究をされていらっしゃるのですか?

大島氏:現在は有機性廃棄物処理の企業の研究所に所属しており、最近は堆肥の中に棲む好熱菌を研究しています。近年は焼却についての規制がいろいろありますので、堆肥を活用した発酵分解処理が増えています。

 もともと堆肥の内部は高温になりますが、大きな堆肥の山をつくるため、内部の熱が逃げずに温度が上昇し、これまで知られていたものとは異なる種類の微生物が働いている可能性が高い。そこで土壌に生息するバクテリアとしてはチャンピオンレコードになるような温度の菌をつかまえて研究を進めています。これは、学問的にも価値があると考えています。

――好熱菌は先生の生涯の研究テーマになっているわけですね。

大島氏:私はよく言うのですが、森を知ろうとするとき、多くの人は森の中に入っていき、一本一本周りの木を眺める。けれども時に道に迷ってしまうことがある。一方、森の淵に沿って森全体を見ながら歩くと、森のことがわかるのはもちろんのこと、あまり道に迷うこともない。研究にはこの両方のスタンスが必要で、好熱菌の研究は後者だと思っています。

 今後も、まだまだ未知のもっとおもしろい働きをする菌を探していきたいということもあるし、今考えているのは、バクテリアをだましてやろうということです。どういうことかと言うと、堆肥の中の菌を過食に仕向けて、堆肥の分解をより促進させるというもの。研究には終わりがないというより、楽しみを探すことには終わりがないんですよ。

――今日は戦前戦後にわたる貴重なお話を伺うことができました。どうもありがとうございました。

大島泰郎(おおしま・たいろう)
共和化工株式会社・環境微生物学研究所長。東京大学大学院生物化学専攻博士課程修了(理学博士)。NASAエームス研究センター博士研究員、アインシュタイン医科大学博士研究員、三菱化成生命科学研究所主任研究員、東京工業大学理学部教授、東京薬科大学生命科学部教授を経て現職。近著に『共に生きる知恵 微生物・人間・情報ネットそれぞれの世界で』(化学同人2009年)、『極限環境の生き物たち なぜそこに棲んでいるのか』(技術評論社2012年)ほか多数。


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