2024年12月21日(土)

研究と本とわたし

2013年8月26日

私たちの生活に身近な気象学を研究する住明正氏。幼少期より文科系の本を多数読んできたという。その読書体験を伺った。

――気象学や気候力学をご専門にされている住先生ですが、幼い頃はどんなことに興味や関心がおありだったのですか。

住明正氏(以下、住氏):小学校に入る前は、身体が非常に弱くて、幼稚園も行かなかったくらいなんですよ。そのとき、うちは父親が国語の教師で本がたくさん本棚に並んでいるような環境だったせいか、まず本が好きになりました。『太閤記』とか『霧隠才蔵』といったような講談本を愛読していた記憶があります。

 それ以降ずっと本は好きでしたが、中学の頃はなぜかあまり読まなかったなあ。当時はいろいろなことに興味があって、その対象は頻繁に変わっていたからだと思います。そう言えばその頃、趣味で新聞の天気図を切り取ってスクラップブックに貼ったりしていたこともありました。

――少年時代に読んだ本のなかで、記憶に残っているものがあれば教えてください。

住明正氏 (撮影:ウェッジ書籍部)

住氏:小学校時代で特に印象的だったのは、『ごん狐』(新美南吉著)と、『シートン動物記』のなかの『狼王ロボ』。うちの家系はどちらかというと独立独歩の孤立型の傾向があって、私自身もやはり孤高を保つローンウルフのような生き方に、幼いときから共感を覚えていました。

 高校生になって、また読書の習慣が復活したのですが、そのときは濫読でした。先ほど話したような環境で育ったので、私も刷り込み的に、本がずらりと並んでいるというのが好きで、全集なども含めて、たくさんの本を買うのが好きでした。例えば、その頃哲学に興味があったので、ちょうど中央公論社から『世界の名著』シリーズが出たので、全巻買い揃えようとしたりもしましたよ。今から思うと見栄があったというか、背伸びしていましたけどね。ニーチェとかキルケゴールとか、読んでも実際にはちんぷんかんぷんだったし、タイトルが並んでいるのを見て満足していたところもあったのは確かです。

 ただ、そういう時代だったとも言えますね。当時は“知識”というのは書籍から得る、というイメージだったし、知識というものに対する憧れや、逆に言うとそういうものに対するコンプレックスが非常に強かったですからね。


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