2024年10月10日(木)

JAPANESE, BE AMBITIOUS!米国から親愛なる日本へ

2024年8月15日

イコールパートナーの関係を
どのように継続・強化するか?

 こうした米国の変貌は、米国の同盟国と友好国に不測の対応を迫る状況を創出しており、米国の国際的な信頼性をも揺るがす事態を招いている。ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は米国の「文化や価値における魅力」を軍事力や経済力と並ぶ「ソフト・パワー」として重視したが、今や米国の国際社会における「ソフト・パワー」そのものにも陰りが見える。日本はこうした変容する米国に対してどう向き合い、グローバルなイコールパートナーとしての役割を果たすべきかを真剣に考える必要がある。

 その際には、米国社会は何事においても個人の自由裁量の余地が大きく、年間約100万人の移民が新しい労働力として流入し、国民の1割以上が移民であるという国際社会で「例外的な国」であるという事実も忘れてはならないだろう。

 日本における米国から直接輸入されたような自我最優先の社会改革を求める一部の動きを見ていると、日本人は日本を米国のような社会にしたいのか、またそれは可能なのか、さらにそれは多くの国民にとって望ましいことかなど、真剣に議論し、国家の将来像を定める状況であると感じる。

 日本が有する最大の資源は、教育程度が総じて高く、他者と協調して活動できる優れた人材である。最近は一流大学のトップクラスの学生の理想の将来像は、官僚や大企業ではなく、起業家や多国籍企業に変化した。しかし、日本の将来は優秀な人材の存在が大前提であることに変わりはない。

 米国と日本のイコールパートナー関係は必然でも、恒久でもない。グローバルなイコールパートナー関係の維持と強化には、時として米国の耳が痛い提言を含む、同盟の維持・強化への不断の努力が欠かせない。外交と安全保障においては、日米が真摯に意見交換・調整できる信頼関係を構築することが、両国の将来にとって健全かつ有益であることは論を俟たない。

日米関係強化には、日本側の努力も欠かせない(WEDGE)

 ヴォーゲル教授が指摘するように、日本は多くの日本人にとって自由で住み心地がよい国である。しかし、そうした国が日本人に永遠に保証されているわけではない。人口動態が示すように日本の国力は中長期的に低下することが必至な状況だ。日本国民には先人たちが構築した自由で住み心地がよい国を引き継ぎ、「個人」の利益と幸福を最大限に求めることに加えて、国際競争で勝ち抜きながら同時に国際社会に貢献する日本の将来像の構築に期待したい。

 そして、日本が民主主義、自由、法治の概念を確実に意識し、一人ひとりの国民の生活を物心両面で充実させ、国際的な役割を果たすビッグビジョンを構築することで、米国のイコールパートナーとして、日本の役割も名実ともに確固たるものになるだろう。

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Wedge 2024年8月号より
JAPANESE, BE AMBITIOUS! 米国から親愛なる日本へ
JAPANESE, BE AMBITIOUS! 米国から親愛なる日本へ

コロナ禍が明けて以降、米国社会で活躍し、一時帰国した日本人にお会いする機会が増える中、決まって言われることがあった。 それは「アメリカのことは日本の報道だけでは分かりません」、「アメリカで起こっていることを皆さんの目で直接見てください」ということだ。 小誌取材班は今回、5年ぶりに米国横断取材を行い、20人以上の日本人、米国の大学で教鞭を執る研究者らに取材する機会を得た。 大学の研究者の見解に共通していたのは「日本社会、企業、日本人にはそれぞれ強みがあり、それを簡単に捨て去るべきではない」、「米国流がすべてではない」ということであった。 確かに、米国は魅力的な国であり、世界の人々を引き付ける力がある。かつて司馬遼太郎は『アメリカ素描』(新潮文庫)の中で、「諸民族の多様な感覚群がアメリカ国内において幾層もの濾過装置を経て(中略)そこで認められた価値が、そのまま多民族の地球上に普及する」と述べた。多民族国家の中で磨かれたものは、多くの市民権を得て、世界中に広まるということだ――


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