2024年11月3日(日)

勝負の分かれ目

2024年8月9日

 「開かれた大会」をスローガンに掲げるパリ五輪で、女子ボクシングの2人の選手に関する性別の疑義が話題を集めている。

 渦中にいるのは、アルジェリアのイマネ・ケリフ選手と台湾の林郁婷選手。2選手に関しては、国際ボクシング連盟(IBA)が「染色体の結果、2人は不適格であることが分かった」などとして女子選手の出場資格がないと主張する。一方、国際オリンピック委員会(IOC)はパスポートなどの公的文書を根拠として、出場資格を認めると同時に、ガバナンスなどの問題から五輪の競技運営権を剥奪したIBAを「IBAの検査は信用できるものではない」と批判する。

出場資格において疑義を向けられる中、決勝へと進んだイマネ・ケリフ選手(ロイター/アフロ)

 両者の対立と性別の問題が混合した情報の錯綜が、現在進行形で試合を行っている選手に対するSNS上の誹謗中傷を誘発する最悪の状況を招いている。

なぜ、判断が分かれたか

 「私は女性です」

 パリ五輪の女子ボクシング66キロ級準々決勝で判定勝ちし、銅メダル以上を確定させたケリフ選手は涙ながらに訴えた。ケリフ選手は7日の準決勝も勝利し、9日の決勝へ駒を進めた。林選手も同じく決勝へと勝ち進んだ。

 ケリフ選手は自身の性別疑義をめぐり、昨年の世界選手権から翻弄されてきた。

 大会の運営主体だったIBAが、男性のXY性染色体を持つ選手の女子競技出場を禁じる規定に違反したことを理由に失格とした。IBAは同じく、林選手が世界選手権で獲得した銅メダルも検査結果を理由に剥奪している。

 2選手が、パリ五輪には出場できているのは、五輪の運営主体がIBAではなく、IOCだからである。


新着記事

»もっと見る