2024年12月25日(水)

ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう

2024年3月5日

 ほんの数分でも、ぐっと力んだ両手には汗が滲んでいた――。

 1月下旬、小誌記者は同僚の女性記者2人とともに、大阪ヒートクール(大阪府箕面市)が提供する生理痛VR体験デバイス「ピリオノイド」を体験した。女性記者たちが涼しい顔で談笑する横で、男性である私は初めて経験する想像以上の下腹部痛に顔を歪めていた。

 この装置は、甲南大学と奈良女子大学において、生理痛の再現の可能性と効果を検証する研究の中で開発された。それを基に大阪ヒートクールがユーザーインターフェース(UI)を簡易化し、ウェアラブル装置として使用できるよう改良を加えたものだ。

 体験方法は至ってシンプル。2枚のパットを下腹部に装着し、筋電気刺激(EMS)を用いて月経時に生じる腹部の痛みを再現する。

生理痛VR体験デバイス「ピリオノイド」(写真・大阪ヒートクール提供)

 同社の吉國聖乃氏は、「痛みは『弱・中・強』と3段階で設定可能で、開発段階では約8割の女性が自らの生理痛は『強』に近いと答えた」と話す。

 冒頭では「強」を体験する記者の様子を記したが、「弱」の段階から訪れるキリキリとした刺激でも、堪えるために力を入れるたびに思わず「うっ」と声が漏れた。

 共に体験した女性記者の1人は「私は『強』か、それより少し弱い痛みがじわじわと広がる感じ」と言い、これに加えて腰痛や眠気を伴うこともあるという。また、「突然この痛みが来ても私たちは顔に出せないし、一緒にいる相手を心配させないように我慢して取り繕うこともある」と実情を語ってくれた。

企業の研修を運営する吉國聖乃さん(大阪ヒートクール提供)

進む女性の社会進出
知っておきたい彼女たちの苦悩

 総務省の労働力調査によれば、2012年に2658万人だった女性の就業者数は、10年間で約370万人増加し、22年には3024万人に上った。同年の男性就業者数は3699万人で、その差は縮小傾向にある。今や働く女性は全く珍しい存在ではなくなった。

 こうした社会情勢の変化に伴い、「女性特有の健康課題」に真剣に向き合い、何らかの取り組みにつなげる必要性は高まっているといえる。

 経済産業省が19年に実施した調査によれば、女性従業員の半数以上が、女性特有の健康課題や女性に多く現れる症状によって職場で困った経験があると回答した。内訳をみると、腹痛、腰痛、眠気などの「月経随伴症状」を挙げた人が7割を、月経前症候群(PMS)等と答えた人が4割を超えた。


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