女性活躍推進クラウド「carefull」の開発・販売などを行うnanoni(東京都港区)が実施した働く女性たちへのアンケート結果からは、リアルな〝困り事〟が見てとれる。そこには、「月経やPMSについて、男性の上司には相談しにくい」「生理休暇を取得する際に『生理』だと伝えなければいけないのが苦痛だ」など、率直な声があがっている。
経産省の同調査では、月経随伴症状による労働損失(欠勤、労働量や質の低下)は年間4911億円と試算されている。一方で、こうした事実を認識している管理者は2割程度にすぎず、男女を問わず十分な知識を有しているとは言い難いのが現状だ。
「男性が」「女性が」ではなく
一人ひとりが生きやすく
前出の吉國氏は「単に男性が生理痛を体験するツールとしてではなく、女性も含めて痛みの感じ方には『個人差』があることを知ってもらいたい。あくまでもそのきっかけとして、女性には『身近』でも、男性には『縁遠い』生理痛を体験してもらっている」と狙いを語る。
実際に、共に体験したもう一人の女性記者は「私の生理痛はとても軽い方だと気づいた」と感想を口にした。その他にも、体験した人からは「こんな痛みがあるとは思っていなかった」「頑張れば働けると思っていたけど、とても働ける痛みではなかった」という声があがったこともあるという。
大阪ヒートクールでは、ただ体験して終わりにするのではなく、この体験を通じて感じたことや、自らの行動で変えられそうなことについて同僚と話し合うことまでを含めた研修事業を展開しており、昨年の夏から約30社、延べ2000人が受講した。地道ではあれ、「男性が」「女性が」と性別や属性にとらわれることなく、「他者」として一人ひとりに目を向ける動きが広まっている。
国力の低下が嘆かれる中、経済界を中心に、多くの組織が「女性活躍」や「多様性」を意識するようになった。真のそれを実現するには、「他者」に思いを馳せることが欠かせない。この取り組みはそのヒントになる可能性を秘めているかもしれない。