2024年5月15日(水)

ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう

2024年3月5日

 女性活躍推進クラウド「carefull」の開発・販売などを行うnanoni(東京都港区)が実施した働く女性たちへのアンケート結果からは、リアルな〝困り事〟が見てとれる。そこには、「月経やPMSについて、男性の上司には相談しにくい」「生理休暇を取得する際に『生理』だと伝えなければいけないのが苦痛だ」など、率直な声があがっている。

 経産省の同調査では、月経随伴症状による労働損失(欠勤、労働量や質の低下)は年間4911億円と試算されている。一方で、こうした事実を認識している管理者は2割程度にすぎず、男女を問わず十分な知識を有しているとは言い難いのが現状だ。

「男性が」「女性が」ではなく
一人ひとりが生きやすく

 前出の吉國氏は「単に男性が生理痛を体験するツールとしてではなく、女性も含めて痛みの感じ方には『個人差』があることを知ってもらいたい。あくまでもそのきっかけとして、女性には『身近』でも、男性には『縁遠い』生理痛を体験してもらっている」と狙いを語る。

 実際に、共に体験したもう一人の女性記者は「私の生理痛はとても軽い方だと気づいた」と感想を口にした。その他にも、体験した人からは「こんな痛みがあるとは思っていなかった」「頑張れば働けると思っていたけど、とても働ける痛みではなかった」という声があがったこともあるという。

 大阪ヒートクールでは、ただ体験して終わりにするのではなく、この体験を通じて感じたことや、自らの行動で変えられそうなことについて同僚と話し合うことまでを含めた研修事業を展開しており、昨年の夏から約30社、延べ2000人が受講した。地道ではあれ、「男性が」「女性が」と性別や属性にとらわれることなく、「他者」として一人ひとりに目を向ける動きが広まっている。

パナソニック コネクトで実施した研修の様子(いずれもパナソニック コネクト提供)

 国力の低下が嘆かれる中、経済界を中心に、多くの組織が「女性活躍」や「多様性」を意識するようになった。真のそれを実現するには、「他者」に思いを馳せることが欠かせない。この取り組みはそのヒントになる可能性を秘めているかもしれない。

   
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Wedge 2024年3月号より
ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう
ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう

「育児休暇や時短勤務を活用して子育てをするのは『女性』の役目」「残業も厭わず働き、成果を出す『女性』は立派だ」─。働く女性が珍しい存在ではなくなった昨今でも、こうした固定観念を持つ人は多いのではないか。 今や女性の就業者数は3000万人を上回り、男性の就業者数との差は縮小傾向にある。こうした中、経済界を中心に、多くの組織が「女性活躍」や「多様性」の重視を声高に訴え始めている。

内閣府の世論調査(2022年)では、約79%が「男性の方が優遇されている」と回答したほか、民間企業における管理職相当の女性の割合は、課長級で約14%、部長級では8%まで下がる。また、正社員の賃金はピーク時で月額約12万円の開きがある。政界でも、国会議員に占める女性の割合は衆参両院で16%(23年秋時点)と国際的に見ても極めて低い。

女性たちの声に耳を傾けると、その多くから「日常生活や職場でアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)を感じることがある」という声があがり、男性優位な社会での生きづらさを吐露した。 

3月8日は女性の生き方を考える「国際女性デー」を前に、歴史を踏まえた上での日本の現在地を見つめるとともに、多様性・多元性のある社会の実現には何が必要なのかを考えたい。 


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