2024年8月12日(月)

BBC News

2024年8月12日

ロシア国防省は11日、ウクライナ軍がロシア領内で最大30キロは前進していると認めた。ロシアが2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始して以来、ウクライナ軍がこれだけロシア領内に入り込むのは初めて。他方、ロシア占領下にあるザポリッジャ原発では火災が発生したもようで、ウクライナとロシアの双方は相手のせいだと非難している。

ロシア国防省は11日、「装甲車を備えた敵の自動車部隊がロシア領内に深く侵入しようとするのを、(ロシア軍が)阻止した」と発表した。

ただし、国境から約25キロのトルピノ村と、約30キロのオブシュチ・コロデズ村で、ウクライナ軍と交戦したことを明らかにすることで、ウクライナ軍の部隊がいっそう深く領内に入り込んだことを認めたもよう。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は「ロシアの平和的な住民を(ウクライナが)脅かしている」と非難した。

ロシア・クルスク州各地にウクライナ軍

ウクライナ軍の部隊が国境を越えてロシア西部クルスク州に侵入して、6日目になる。

クルスク州をめぐってはロシアが6日に攻撃を受けたと発表し、後に同州に非常事態が宣言されていた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日夜のテレビ演説で、クルスク州で自軍が越境攻撃を行っていることを初めて認めた。夏に入りロシアが国境のクルスク側から2000回以上、ウクライナを攻撃しているのだと大統領は話した。

「砲弾、迫撃砲、ドローン。ミサイル攻撃も確認している。すべての攻撃には、反撃がふさわしい」とゼレンスキー大統領は国民に述べた。

ウクライナ軍はこれまでに、クルスク州で複数の集落を制圧したと主張している。国境から約3キロのグエヴォ村では行政庁舎からロシア国旗を取り外す様子を兵士たちが撮影している。

ほかにも、スウェルドリコヴォやポロズの村でウクライナ軍が行政庁舎を制圧する様子の映像が浮上している。人口5000人のスジャ村でも激戦が報告されており、ロシアからウクライナ経由で欧州連合(EU)に天然ガスを運ぶ作業にかかわる主要ガス施設の外で、ウクライナ兵士たちが自分たちの様子を撮影している。

ロシア・クルスク州に国境を接するウクライナのスーミ州では、人員輸送装甲車や戦車が次々とロシア国境へ向かう様子を、BBCの記者たちが目にしている。

装甲車には白い三角形が描かれており、ウクライナ国内で使用されている車両や装備と区別するための印と思われる。

空撮写真は、ロシア領内での戦闘に参加するウクライナの戦車と思われる様子も捉えている。

オンラインで広まっている動画をBBCが検証したところ、国境から約25キロにあるクルスク州レウシンカ村の近くで撮影されたもので、ロシア軍による攻撃の様子が映っていた。

BBCヴェリファイ(検証チーム)はこのほか、クルスク原発の近くにロシア軍が新しい防衛線を構築している様子と思われる写真を確認した。

ロシア国防省がウクライナ軍との交戦があったと認めたオブシュチ・コロデズ村は、クルスク原発から約50キロの距離にある。10日撮影の衛星画像と数日前の衛星画像を比較すると、原発施設から約8キロ離れた場所で、新しく設置された塹壕(ざんごう)が並ぶ様子が確認できた。

ロシアは、クルスク州の国境付近から住民7万6000人を避難させたと明らかにした。現地当局は非常事態を宣言している。

現地のアレクセイ・スミルノフ知事代行によると、撃墜したウクライナのミサイルが州都クルスクのビルに墜落し、15人が負傷したという。

目標はロシア国内の不安定化とウクライナ高官

ウクライナ政府幹部はAFP通信に、クルスク州への攻撃は兵数千人規模の作戦だと話した。ロシア国境警備隊は当初、小規模な攻撃に過ぎないと報告していた。

ウクライナが支援する工作グループは過去にも散発的に、ロシアに越境攻撃を重ねていたものの、現在のクルスク攻撃は今回の戦争において、ウクライナの正規軍による最大規模の反撃となっている。

政府幹部はAFPに「こちらが攻勢に出ている。目的は、敵の位置を分散させ、最大限の損失を与えること。そして、自国の国境も守れないという状況を作り出し、ロシア国内の情勢を不安定にすること」だと話した。

ウクライナ議会のオレクシイ・ゴンチャレンコ議員はクルスクでの作戦をたたえ、「100回の平和会議よりも、我々を平和に近づけてくれた」と述べた。

「ロシアが自国領内で反撃しなくてはならず、ロシア国民が逃げている時、ロシア国民が(戦況を)気にするようになったとき、そのとき初めて、戦争をやめろとロシア人に言えるようになる」と議員はBBCに話した。

一部の軍事専門家は、ウクライナがクルスク州を攻撃するのは、ロシア軍が徹底的に攻撃しているウクライナ東部から部隊を移動させることが目的だろうと指摘する。ただし、ウクライナ高官はAFPに、東部でのロシアの攻撃はほとんど軽減していないと話した。

クルスク攻撃についてロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「重大な挑発」と呼んでいる。

他方、現地の救急当局よると、11日朝にかけて首都キーウ近くが被害を受けたミサイル攻撃で、男性と4歳の息子が殺害された。防空システムはロシアが発射した攻撃ドローン57機のうち53機を撃墜したという。一連の攻撃には、北朝鮮製のミサイル4基も含まれていたという。

ザポリッジャ原発で出火

ロシア占領下にあるウクライナ・ザポリッジャ州のロシア当局によると、ザポリッジャ原発で11日、火災が発生した。

ロシア政府が任命したエフゲニー・バリツキ知事は、ウクライナ軍の攻撃が出火原因だと主張。原発施設周辺での放射線量に変化はないという。

ロシア国営タス通信は12日未明までに、火災の大部分は鎮圧されたと発表した。

国際原子力機関(IAEA)はソーシャルメディアで、現場のIAEA査察官は施設の北側から「黒煙が激しく上がる」のを見たものの、原発の安全性への影響は報告されていないと述べた。

ゼレンスキー大統領はソーシャルメディアで、「ロシアの占領者がザポリッジャ原発の敷地内で火災を発生させた様子を、ニコポリから撮影した」と動画を投稿した

ザポリッジャ原発は2022年からロシア軍とロシア当局の管理下にある。発電は2年以上止まっており、今年4月からは原子炉6基がすべて停止している。

(英語記事 Ukrainian troops now up to 30km inside Russia, Moscow says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cpw82werjw4o


新着記事

»もっと見る