2024年8月16日(金)

BBC News

2024年8月16日

ヤロスラフ・ルキフ、BBCニュース(ロンドン)

イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区で15日夜、数十人のイスラエル人入植者が村の家屋や車に放火した。パレスチナ自治政府の保健省によると、少なくとも1人が殺害された。

イスラエル国防軍(IDF)によると、覆面などをしたイスラエル人入植者はナブルスに近いジト村を襲撃し、石や火炎びんなどを投げつけた。

15日夜にジト村で車や家屋が炎上する様子とされる映像が、ソーシャルメディアで共有されている。村の上空に黒煙が上る様子も見える。

パレスチナ保健省は、パレスチナ人住民の20代男性が殺害され、もう1人が胸に重傷を負ったと発表した。IDFは、死者が出た事態について調べていると発表した。

一方で、イスラエル国籍の1人がジトで拘束されたとIDFは述べている。

IDFは声明で、暴力の通報を受けて「数分以内に」部隊を村に派遣し、群衆を解散させるために空中に警告射撃をしたと発表。その後、村を襲った入植者たちを連行したという。

IDFはさらに、「重大な事件」を受けて、IDFとイスラエル総保安庁(シンベト)とイスラエル警察が合同で捜査に着手したとも発表した。

イスラエルの政界関係者は、入植者によるこの攻撃を非難し、実行犯たちを厳罰に処すると約束した。

イスラエル首相府は声明で、「あらゆる犯罪行為の責任者は拘束し、起訴する」と述べた。

イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領はソーシャルメディアに、「法に従う入植者のコミュニティーや入植地全体を損なう、ごく一部の少数者によることだ。しかも、特に難しく厳しい状況のこの時期に、世界におけるイスラエルの評判と地位を損なうものだ」と書いた。

大統領はさらに、責任者に法の裁きを受けさせるため「捜査機関は直ちに行動しなくてはならない」と強調した。

アメリカ政府は、イスラエル人入植者によるパレスチナ人の集落攻撃は「容認できないことで、やめさせなくてはならない」とコメントした。

ホワイトハウスの安全保障会議(NSC)報道官は、「イスラエル当局はすべてのコミュニティーを被害から守るため、対策をとらなくてはならない。これには、こうした暴力を阻止するための介入も含まれ、こうした暴力の加害者全員を処罰することも含まれる」とコメントした。

パレスチナ人は、イスラエル治安当局が暴力的な入植者による集落攻撃を容認していると、繰り返し非難している。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)によると、昨年10月以来、イスラエル人入植者がパレスチナ人を攻撃する事件は1000回以上発生している。このため、子供660人を含む少なくとも1390人のパレスチナ人が、住む場所を失っている。

入植者によるこうした暴力は、殺傷力を伴うものが多い。OCHAによると、107件の攻撃がパレスチナ人の死傷につながり、859件がパレスチナ人の土地建物など資産への損害につながっている。

ガザ地区での戦争に国際社会の注目が集まる一方で、ヨルダン川西岸などで入植者によるパレスチナ人の暴力も悪化している。このためアメリカ、イギリス、欧州連合(EU)は一部の入植者リーダーに制裁を科しているほか、入植者の前哨地1カ所が初めて丸ごと、制裁対象になっている。

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c0jpz4nj76eo


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