2024年11月22日(金)

徳川家康から学ぶ「忍耐力」

2024年8月25日

プロ野球の監督では?

 信長は、人を殺すのが平気で、長島一向一揆征伐や比叡山焼討ちが示すように、女子どもや坊主まで根こそぎ殺して快感すら覚えるタイプだ。自分を裏切って朝倉義景に走った義弟浅井長政を殺しただけでは飽き足らず、髑髏盃(どくろはい)にして新年会で披露する執念深さで、まさに狂気と紙一重ともいえる異常性格の「究極のサディスト」だ。気分次第で優しくなるというから不気味で恐ろしい。プロ野球の監督でいえば、捕手の中村武をベンチ裏でボコボコにするのがルーティン化していた〝昭和の体育会系闘将〟星野仙一。

 わが手で人を殺すのが嫌で「兵糧攻め」や「水攻め」を好んだ秀吉は、主君信長から「猿」とか「禿げネズミ」と呼ばれても嫌がるどころか快感を覚える「マゾヒスト」で、「女たらし」を含めた〝人たらし〟である。その点から見ると、「長島茂雄が太陽に向かって咲くヒマワリなら自分は日陰に咲く月見草」などと暗い顔でぶつぶつ自虐ネタをぐちりながら、現役時代には三冠王になり、監督になると「記憶より記録」と克明なメモを取りながらライバルチームの選手を徹底分析、裸にして手玉に取った〝ボヤキの名監督〟野村克也か。

 では家康は? 直情径行型のサディスト信長が発した「妻子を殺せ」との無茶な要求を、家康は拒まず、心で反抗し涙したが、姉川の戦いに援軍として駆けつけた際には、信長から2番手を言い渡されるとプライドが許さず、先陣を主張して譲らず、信長に承諾させた意地っ張りで強情な一面を発揮した。長篠の戦いでは信長に「知らぬ顔をするなら武田勝頼と組んで、信長殿を攻める」と脅して援軍を送らせるなど、家康は〝サド・マゾミックス〟ではなかろうか。

 日本球界の逸材に喩えるなら、ナンバーワンの大打者なのに、〝直感型天才のミスタージャイアンツ〟長島の人気の影に隠れて、地道な努力を積み重ねて才能を開花させた〝世界の本塁王〟王貞治か。同じ天才でも、長島は〝信長のような閃き型の天才〟であるのに対し、王は〝秀吉のような努力型の天才〟という見方もできる。

 巨人の監督期間は、王は5年間で長島の15年間とは大差が生じているが、ダイエー・ソフトバンクでは15年も監督を務め、巨人時代と合わせると長島を抜いており、〝人気の信長、実力の家康〟のような感じもしなくもない。読者諸兄の考えや、いかに?

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