用途別に分けられるコメ
生産された全てのコメが小売店などから一般消費者へ届けられるわけではない。主食用米というのは、国の作況(1.7mmの篩下はくず米の扱い)や需給計算上では、1.7ミリメートル(mm)メッシュの篩(ふるい)の上に残るものとされている。しかし、実際にJAが取引する際には、各県毎に篩目を1.8mm以上とか1.85mm以上というように粗くし、コメの品位(見た目)を良くするのが通常である。
その際に篩下に落とされた1.7~1.85mmのコメは、いわゆる業務用米として、外食産業などが自らの品質判断のもとに価格を決めて取引し、購入していく。こうした自由自在の調整(ブレンド)の役割を担うのが「特定米穀業者」と言われる方々である。
コメ需給がタイトになれば、ときには、1.7mm以下も業務用としてブレンドし有効利用することもあるが、一般には、1.7mm未満は、味噌、焼酎など加工用に向けられる。あるメーカーのビールの表示を見て欲しい。原材料として「米」と表示されている。
この特定米穀の発生量は普通作の年であれば50万~60万トンの規模だから、需給がタイトになって篩目を小さくした結果「特定米穀(業務用米)ではコメが30万トン足らない」と報じられると、そこへの買い急ぎ、奪い合いも生じかねない。現物の確保を求めて「高値が高値を呼ぶ事態」を引き起こすことにもなる。
ジタバタすればさらに混乱を呼ぶ
今回の「令和の米騒動」の原因としてメディアなどでは、23年夏の猛暑など異常気象で品質(品位)が劣化し精米歩合が低下し、またインバウンド需要が増加してタイトになった、日向灘地震と南海トラフ大地震への警戒情報(備蓄の勧め)が不安を煽り、流通業者、消費者に買い急ぎをさせたことが挙げられている。
ここで思い出されるのが、1978年から5カ年にわたる水田利用再編対策がスタートし、コメの生産調整が実質強化された頃である。皮肉なことに、過剰を前提とした政策運営の下で、1980年産(作況指数87)、81年(96)、82年(96)、83年(96)と4年連続して不作が続く。自主流通米の価格は上り、食糧庁の需給計算上では完全にショートであった。
しかし、当時の担当者に何の焦りもない。「価格が上がればモノは、産地からも流通パイプからも必ず出てきます。問題は先をどこまで予想するかです」。経験者の確かな対応で、事態は自然に収束していった。
供給不足と価格高騰の防止の観点から関西のある卸は政府備蓄の2~3年古米をブレンド技術で遜色なく活用していた事例も耳にする。民間による対応もしっかりなされていた。ジタバタすることがさらなる混乱を呼ぶことになるというのだ。