また、彼らはヨーロッパ、中東、日本に住むが、国名は特定しない。また、彼らの名前も、今後その生活に影響が出ないよう、すべて仮名である点をご理解いただきたい。彼らはIT関連業界や外食産業、貿易業務などに従事している。
プーチンは国を救っていない
オクサナさん(30代、女性)
「1990年代の混乱から、プーチン氏がロシアを救ったとの見方には同意しません。彼は単に、適切な時と場所にいただけで、一時的に多くの人々にとり、領土や政治、経済の安定を提供したに過ぎないからです。
プーチン氏は逆に、2021年代半ばから、権力と影響力を維持するために、それまでロシアが国際政治や経済の分野で達成したものを打ち消し始めたと思います。
2000年代初頭は、石油と天然ガスの売り上げから高い利益を受けたために、彼は国の制度を強化し、さらに経済を安定化させることができました。実際、人々の生活水準は改善され、消費が増え、雇用が生まれたと思います。
さらに、巧妙なプロパガンダにより、生活が〝安定している〟との幻想が生まれました。人々は次第に、政治に関心を持たなくなったのです。民主主義が何なのかを学ぶ時間もなかったでしょう。
ソ連崩壊以後、1990年代から2010年代までの期間は、人々が新たな自己認識に至るにはあまりに短い時間でした。その間、政府は民主的な制度も築きましたが、それは徐々に、権力を乱用するための隠れ蓑となったのです。例えば、現在のロシアには、独立した裁判所というようなものは存在しません。
もしプーチン氏が本当にロシアを〝救った〟のであれば、すでに国は民主主義の方向に歩んでいるべきだし、優れた知識を持つ人々や、労働力が国を去ることを懸念する必要はなかったはずです。自分の意見を表明することだけで、戦争に動員されたり、刑務所に入れられたりすることを懸念する必要はなかったと思います。
それではなぜ、現在も多くのロシア人がプーチン氏を支持しているのでしょうか。それには多くの理由があります。
まず、多くのロシア人は、民主主義や政権交代の必要性、また、それらが彼らの生活にどう影響するかを理解していません。彼らは海外に行ったことがなく、ほかの人々の生活様式を見たことがないため、自分たちにとって、よりよい生活というものを望んでいないのです。
一方で、多くの人々にとって、1990年代の困難な時期がまだ新しい記憶として残っています。彼らは〝今の状況が十分に良好〟なのだと思い込んでいて、それはロシアの政治的指導者であるプーチン氏のおかげだと考えているのは事実です。
また、これらのロシア人は多くのケースで、公共セクターで働いていて、自分たちの仕事と生活の安定が、国に負うと考えているから、プーチン氏を支持しているという側面があります。
ロシアには貧しい人が多いのです。彼らは政治にそもそも、関心を持つ余裕がありません。だから、いわば自動的にプーチン氏を支持しています。また、テレビやメディアには強力なプロパガンダがあって、人々はほかの政治家を知らず、異なる視点でものごとを見ることができません。プロパガンダは、常にほかの国々がどれだけ悪いか、またプーチン氏が、いかにすべてを正しく行っているか──というメッセージを語り続けているからです。