年齢規定は憲法違反?若者の政治参加を
過去にも構造改革特区などでいくつかの自治体が被選挙権年齢の引き下げを求めてきた。具体的には03年以降、埼玉県北本市や広島県三次市が提案している。
地方自治体の選挙制度を所管する総務省はこうした動きに真っ向から反対している。国家戦略特区については、アベノミクスの経済再生が狙いで、被選挙権年齢の引き下げと経済再生は関係がない、というのを理由に掲げて抵抗した。
特区提案に賛同する福島県南相馬市長の桜井勝延氏は「若者が自分たちの将来を考えて市のあり方を決めていくには、若者の政治参加が不可欠だ」という。南相馬は、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故に遭遇。どうやって市を再興していくかという難題に直面している。市の再生、経済復興には若い力が必要で、被選挙権年齢の引き下げは、突破口の1つになる、というのである。
桜井市長のほか、松尾崇・鎌倉市長や石津賢治・北本市長らも、この動きに賛同している。被選挙権の枠を広げることは自らの対立候補を増やすことにもなりかねないが、そんな目先の計算よりも、若者の政治参加の重要性を痛感しているのだろう。
欧米では、被選挙権年齢も大幅に引き下げられている。国立国会図書館のまとめによると、世界191カ国のうち58%の国で21歳までに被選挙権が保障されている。OECD加盟34カ国に限れば52.9% (18カ国)が18歳までに、79.4%(27カ国)が21歳までに被選挙権を与えている。
選挙の結果、実際に米国のペンシルベニア州マウントカーボン町では01年に18歳の大学生町長が誕生、05年にはミシガン州ヒルズデール市で18歳の高校生市長が生まれている。
「憲法が成人に保障する普通選挙権には被選挙権も含まれると考えれば、年齢で被選挙権を規定する公職選挙法は憲法違反と言えるかもしれない」と選挙制度に詳しい弁護士のひとりは言う。被選挙権の引き下げは選挙権に比べてハードルが低いのだ。
総務省は、最終的に反対を「選挙制度は全国一律であるべき」という理屈で押し通した。今後、全国一律の制度改正として被選挙権年齢の引き下げが議論される見通しだ。自治体が独自に首長を選ぶルールが決められること。これが地域再生、民主主義再生の第一歩になるのではないか。
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