現在20歳以上になっている選挙権年齢を引き下げるべきだ、という議論がある。欧米では1960年代から70年代にかけて、選挙権年齢を18歳に引き下げる動きが相次いだ。OECD加盟34カ国のうち18歳でないのは、今や日本と韓国だけだ。しかし、韓国は05年に20歳から19歳に引き下げた。欧州では現在、16歳への引き下げの動きが強まっており、ノルウェーでは11年から投票年齢の16歳引き下げのための特区制度が設けられ、地方自治体の選挙で実験的に行われている。
だが、日本での選挙権年齢の引き下げとなるとハードルは高い。日本国憲法第15条には「成年者による普通選挙を保障する」と書かれているからだ。仮に18歳に引き下げる場合、各種の法律を変えて成人年齢を18歳とするか、憲法を変えて18歳以上に普通選挙権を与える必要があると考えられている。しかも、選挙権年齢を下げたからと言って、若者が投票に行くことにはならない、という反対論も根強い。
大学3年生の講義で「選挙権年齢が18歳に引き下げられたら、学生は投票に行くようになるか」と聞いてみたところ、「行くようになる」と考える学生はごく少数だった。3年生だから投票権を持っている学生が多いが、彼ら自身、ほとんど行っていない。
そこで「もし同級生が立候補できたら投票に行くか」と聞いた。すると多くの学生が「それならば行く」と声を上げた。自分たちの声を代弁してくれる候補者がいれば投票に行くという「当たり前」の反応だったのである。
日本では、成人になっても立候補できない。公職選挙法で立候補できる年齢、つまり被選挙権年齢を定めているからだ。市区町村長や衆議院議員は25歳、都道府県知事と参議院議員は30歳。実は、被選挙権年齢引き下げの動きが長年くすぶっている。
安倍晋三内閣は、様々な規制を見直す突破口として「国家戦略特区」を設置することを決め、12月の臨時国会で成立させる。特区でこれまでのルールを先行的に見直し、その効果を検証しようというものだ。この法案を作る段階で、対象が15項目に絞り込まれていたが、実際に法案に盛り込まれたのは14項目。1つだけ役所との最終折衝で落ちた項目があった。
それが「被選挙権年齢の引き下げ」だった。自治体が地域の事情に合わせて独自に立候補年齢を決めるべきだという発想で、それを特区として認めようというものだった。