〈教育・学術研究〉
「昨今、公立学校において、人種差別撤廃の重要性を強調する”woke propaganda”が蔓延している現状にかんがみ、新政権においては、教育全般に関わる連邦政府の役割を大胆に縮小し、各州において親の学校選択、親の権利向上ための改革を推進させる。この目標実現に向けて連邦教育省を廃止し、各州を連邦政府の指導要領、教育プログラムなどの拘束から解放する。
この結果、連邦政府が各州の学校における人種差別事例などの摘発に乗り出す事態も解消され、学校独自の判断に委ねられることになる。低所得家庭児童に対する180億ドルにおよぶ連邦助成金も期限切れとなり、無料だった学校給食助成金も削減される。
学術研究については、『新政権の保守主義思想に沿った国益』を優先させ、気候変動などの研究予算は大幅削減する」
「自分とは関係ない」と言い張るトランプ
上記のような過激な内容が随所に盛り込まれた「Project 2025」だが、とくに米主要テレビで全米4000万人近くが視聴したとされる民主党全国大会で繰り返し紹介されて以来、話題は各州に広がる一方だ。
そして今や、全米有権者の7割以上が世論調査で「同プロジェクトの存在を知っている」と回答(ヘリテージ財団独自調査)するほど、認知度も高まっている。
しかも、その中身についても、マサチューセッツ大学政治学部が実施した世論調査によると、有権者の6割以上が「反対」を表明しており、とくに、大勢の連邦政府上級スタッフたちを「政治任用職」とする計画については、68%が異議を唱えているほどだ。
このため、2カ月後に迫った大統領選の争点ともなりつつあり、ハリス民主党候補はその後も、遊説先などで機会あるごとに、投票態度をいまだ決めかねている無党派層に向け同政策レポートとトランプ氏の関係に言及、「彼が再び大統領になれば、国民国家に重大な脅威をもたらす」と警鐘を鳴らし続けている。
これに対し、トランプ氏は、その都度繰り返し火消しと防戦に追われてきた。
最近も、「Fox News」テレビ番組の中で「ハリスは『Project 2025』と結び付けようとしているが、自分とは何の関係もない」「あれはひとつのグループが集まってまとめた報告書だが、自分はその内容を見ていないし、見たくもない」などと述べ、関係を否定している。
しかし、ニューヨーク・タイムズ紙などの有力紙(複数)は、トランプ氏が実際は、同プロジェクトとはスタート時点から深いかかわりがあったと報じている。その一つの例として挙げられているのが、「ヘリテージ財団」のロバーツ理事長との親交ぶりだ。
同紙によると、トランプ候補は「ヘリテージ財団」の理事会を兼ねた夕食会に出席、ロバーツ氏と同じテーブルに並んで歓談したほか、ロバーツ氏専用ジェット機で一緒に財団年次総会にかけつけ、政権構想について演説したことなども判明している。
米マスコミでは、こうした二人の親密な交流などから、トランプ氏が当初から「Project 2025」の動きの一部始終を知っていたとの見方が大勢を占めている。
また、政策レポート作成に当たっては、トランプ前政権を支えた50人近くの当時の閣僚級、上級官僚、スタッフたちが名をつらねており、まさに“トランプ人脈プロジェクト”の感を呈していると言ってもいい。
さらに、トランプ氏のみならず、J.D. バンス副大統領候補も、同レポート出版に際し、内容を絶賛する「序文」を自ら執筆しており、今や共和党の正副大統領候補が揃って、批判の矢面に立たされた格好だ。