2024年9月9日(月)

バイデンのアメリカ

2024年9月9日

共和党関係者たちも続々とハリス支持へ

 こうした矢先、去る8月20日には、共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領、ミット・ロムニー、ジョン・マケイン両元大統領候補の下でそれぞれ首席補佐官、広報担当官などの要職にあった上級スタッフたち238人が、全国紙「USA TODAY」に、「Project 2025」批判ととともに、ハリス民主党候補への投票を呼び掛ける異例の「公開状」を特別寄稿、この中で以下のよう指摘している:

 「これまで共和党政権で仕事をしてきた我々は今日、全員一致でカマラ・ハリス民主党候補に投票することを宣言する。ハリス候補との間では率直なところ、イデオロギー面などで見解を異にする点もあるが、しかし、ほかに選択肢は残されていない。

 国内において、(前政権時に加え)新たに4年間のトランプによる混乱に満ちた指導体制の下で『Project 2025』の危険極まりない政策目標が進められることになれば、国民一人ひとりに害をもたらし、わが国の神聖な政府組織が脆弱化に追い込まれる。世界においても、トランプと礼賛者のJ.D.バンスがプーチン(ロシア大統領)のような独裁者に首を垂れる一方で、我が国の同盟諸国に背を向けることによって、民主主義運動がとりかえしのつかないほどダメージを受けることになる。

 現在のバイデン民主党政権は、2020年大統領選挙の際に重要な接戦州(ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンなど)において穏健共和党支持者と保守寄りの無党派層が支持投票を行った結果、誕生した。我々はこの教訓を踏まえ、今年11月の大統領選挙においても、とくに穏健共和党支持者および無党派層がトランプを回避し、ハリス候補に投票するよう要請する」

 共和党関連ではこのほか、レーガン、H.W.ブッシュ、ジョージ・W. ブッシュ歴代政権を支えた著名弁護士たち十数人も、「Project 2025 」に反発、ハリス支持の声明を出している。

 9月6日には、歴代共和党政権下でホワイトハウス首席補佐官、予算局長、国防長官などを務めたディック・チェイニー元副大統領も、「トランプは米国民主主義の破壊者」として、ハリス民主党候補に投票することを正式表明した。

ハリス陣営は“トランプの恐怖”のあおりへ

 「Project 2025」がトランプ陣営にとって、当初の予想以上に困惑材料になりつつある一方、ハリス陣営は、9月に入り、これを追い風にしたキャンペーンに乗り出し始めた。

 去る2日からは、フロリダ州など重要州有権者向けに、トランプ候補と「Project 2025」を関係づけた選挙広告をTVやインターネットを利用して流し始めており、その中で「トランプ再登場で米国民が大切にしてきたあらゆる価値観が蹂躙される」「『Project 2025』はトランプが独裁者になるための青写真」などと訴えている。

 民主党全国委員会(DNC)もこれに同調し、全米各地の公園や空き地に「トランプ就任1日目に独裁者に! 『Project 2025』をグーグル検索しよう」と大書きした選挙看板を立てかける特別作戦に乗り出した。

 これまでのところ、こうした民主党陣営の一連の“トランプの恐怖”をあおるキャンペーンは徐々に有権者の心に響きつつあるようだ。

 CNNテレビがペンシルバニア、ウィスコンシン、ミシガンなど勝敗のカギとなる接戦州6州を対象に行った最新世論調査結果によると、いずれの州においても、過半数に近い有権者がトランプ氏返り咲きに恐怖感を抱き、結果的に同氏を敬遠していることが明確になった。

 このCNN調査では、「トランプ候補の考えは極端で国民の脅威と思うか」との質問に対し、ウィスコンシン(51%), ミシガン(49%)、ジョージア(48%)、ペンシルベニア(48%)、ネバダ(47%)、アリゾナ(46%)と、接戦州6州すべてにおいて、多数が「そう思う」と回答している。

 同調査結果を踏まえ、ワシントン・ポスト紙のベテラン・コラムニスト、アーロン・ブレーク氏は早速「”恐怖要因“(fear factor)がトランプ候補にダメージを与えている」として、次のように論じている:

 「今回の大統領選挙ではある意味、どちらの候補が国にとってより大きなダメージとなるかが争点となる中で、CNN調査結果は、ここ数週間の選挙戦通じ、ハリス陣営にとってまたとない好材料となっている。調査対象6州すべてにおいて、選挙登録を済ませた有権者のうち平均で54%が『トランプは主義主張が極端すぎる』、48%が『国にとっての脅威』と回答する一方、ハリス候補については大多数が『全般的に主流の存在』と受け止めている……こうした結果は今後、ハリス陣営にとって、有権者を投票所に向かわせる有効な動機付けとなるだろう」

 トランプ氏が今年の大統領選に勝利するためには、今後、残された60日足らずの選挙戦を通じ、有権者の間に根付きつつあるこうした恐怖感をいかに払拭できるかが重要なカギとなりそうだ。

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