G7の石炭火力の現状
石炭火力は、世界の発電量の36%を担う最大の電源だ。世界一の電力消費国中国と3位のインドは石炭火力にそれぞれ発電量の61%、75%を依存している。両国だけで世界の石炭火力の発電量の3分の2を占める(図-1)。
G7国の中で、輸入炭を利用する日本と国内炭を依然利用しているドイツ、米国の石炭火力は発電量が多い。
G7の残りの国は、国内炭鉱の閉山に合わせ炭鉱に隣接する老朽化した火力発電設備の休廃止を進めた。石炭火力の比率は数パーセント以下まで低下した(図-2)。
設備も比較的新しい日本の石炭火力の閉鎖は、電気料金上昇と供給の不安定化を招くので簡単ではないが、国内産石炭を利用する発電所を廃止する計画を持つドイツも米国も、その早期実現は危うくなってきた。
ドイツでは、旧東独地域にある地域経済を支える褐炭の炭鉱と発電所の早期閉鎖が政治的にますます困難になっている。旧西独地域との比較で経済的に苦しい市民が多い旧東独地域での右派政党の躍進を目のあたりにしている連邦政府の政権与党は、早期に石炭火力発電所を閉鎖すれば右派政党の一層の躍進につながると懸念しているように見える。
脱石炭政策が東西の分断を浮かび上がらしているドイツの現状を見てみよう。
躍進した右派も左派も脱「脱石炭・脱炭素」を主張
今月の旧東独の2州の議会選挙の結果は、日本でも大きく報道された。右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が大きく躍進した。2州の選挙結果は図-3の通りだ。
AfDは、チューリンゲン州では2019年の州議会選挙の得票率23.4%を32.8%に伸ばし、第一党に躍り出た。ザクセン州では、27.5%から30.6%に伸ばした。AfDに投票した有権者は、旧東独地域は旧西独地域より不利に扱われていると感じ、さらに社会、経済が急激に変わることに不安を持っているとされている。
AfDの躍進の陰になり、日本ではあまり報道されていないが、今年1月に左派党のメンバーを主体に設立された左派ポピュリスト政党とされる新党ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)が、両州においていきなり10%以上の得票率をあげたことも注目される。
AfDもBSWも脱・脱石炭を掲げており、右も左も旧東独地域が主生産地の石炭の継続利用を訴えている。炭鉱と石炭火力発電所は地域にとり雇用でも収入面でも重要な産業なのだ。