米国社会は多様性を選ぶのか
加えて、ハリス本人の実力も未知数である。ヒラリー・クリントンの場合は、ビル・クリントン政権において医療制度改革を任され、その後、ニューヨーク州選出上院議員をつとめ、加えて、国務長官という国政上の重要ポストも担うなど、ホワイトハウス入りしたその日から仕事を始められるといわれたものである。
それに対して、ハリスは副大統領就任後、短期間で多くのスタッフが辞めてしまうなど人間性に問題があるのではないかという声もある。また、副大統領として目立った業績も上げていない。
今回の選挙で、ハリスが担っているのはトランプ的なものへのアンチテーゼとしての役割である。白人男性が国を率いるという「古き良き時代」に戻そうとするトランプを阻止するために、多様性を認める社会の象徴として女性でアフリカ系でアジア系であるハリスがいる。
2020年には、同じ役割を担ってバイデンがいた。ただ、バイデンは政治経験豊富な白人男性であり、多くの人は安心して票を投じることができた。今回はどうだろうか。
今回の選挙は、トランプ的なものにどれだけノーと言いたいのか、その試金石となるだろう。多様性を認める未来ということで押し切る力がハリスにあるのか、米国民にその覚悟があるのか、それが問われている。