これまでの大統領家族像とは大きく異なる
次にハリスはアフリカ系である。父親がジャマイカからの移民である。アフリカ系の大統領としては既にバラク・オバマが大統領を務めており初めてということではないが、黒人が大統領になることへの抵抗はいまだに強い。
オバマが2期8年大統領として勤め上げホワイトハウスを去る時、「これでまた『美しい人たち』がホワイトハウスに入るのでうれしい」という、白人女性からと思しき人たちによるSNSへの投稿が多くなされ話題となったことがある。彼女たちにとってあるべきホワイトハウスの大統領一家の姿とは、白人男性の大統領と白人女性の夫人、かわいらしい白人の子供たち、そして素敵な犬というものであった。
8年間にわたる黒人男性の大統領、黒人の夫人、黒人の子供たちという絵柄では落ち着かなかったと彼女たちはツイートした。オバマ政権の時ですら強い抵抗感が示されたのだから、ハリスが勝利してホワイトハウス入りするとなると、黒人女性が大統領で、その白人の夫が配偶者として寄り添う人種どころか性別までもがこれまでの「常識的」な家庭とは異なるものとなる。
アジア系もマイナスに?
このような懸念に加えて、ハリスがアジア系であるという点も忘れてはならない。もしかするとハリスの当選にとって一番の障害となるのはアジア系であるということかもしれない。
ハリスは母親がインドからの移民である。アジア系移民は、主流派の白人や、かつて奴隷として白人に無理やり連れて来られてしまった黒人と違い、いまだに米国社会において「未知なる他者」という立場を脱却できていない。
何世代も前にカリフォルニアに移民したアジア系の移民で、曾祖父の代から英語しか話さないアジア系米国人も、アジアの国名を期待されて頻繁に「どこから来たのか」と聞かれる。そこで「オークランド」と答えると、「いやそうでなくて出身地だ」と聞き直される。アジア系のその顔立ちが、米国社会にとっていまだに外来者と映るのである。米国に移民したばかりのメラニア夫人のような東欧出身の白人があっという間に溶け込むのとは対照的である。
しかもアジア系という属性は、今回の選挙での重要争点の一つである移民政策を語る上でもマイナスに働く。今回のテレビ討論会では、取り上げられたトピックの多くで、ハリス優位との調査結果が出たが、トランプ優位と出た数少ないトピックの一つが移民政策である。トランプが当選した方が移民政策を厳しく実施してくれそうで、アジア系のハリスが大統領になると、より多くの移民が流入するのではないかとの懸念がついてまわっていることがわかる。