2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年9月18日

 米国は、サリヴァンによる警告によって、ロシアの脅威に屈しないという姿勢を示した。米国とその同盟国は、ロシアのレッドラインを尊重するのではなく、徐々にそれを踏み越えることによって、段階的なエスカレーションによってプーチンをどれだけ押し込むことができるかを試してきた。

 西側では、クルスク攻撃によってプーチンの核の脅威の虚妄が決定的に暴かれたとの見方もある。ロシアへの侵攻は「核兵器の使用が想定される最後のレッドラインであり、ウクライナ軍はそれを越えて前進している」とも指摘される。

 一方、米国は最後のレッドラインが成功裏に突破されたとは考えていない。バイデン政権は、仮にプーチンが自分の政権が完全な敗北の瀬戸際にあると信じれば、ロシアは核兵器の使用に訴える可能性があると考えている。

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ロシアが直面する核使用の4つの問題

 ロシアの核威嚇にどう対応するか。その点についてのウクライナと米国の立場の相違にフォーカスを当てたラックマンの論考である。

 プーチン大統領は22年2月のウクライナ侵略の開始以来、さまざまな形で核使用の威嚇を繰り返してきた。それは、ウクライナによるクリミア奪還、支援国から供与された兵器のロシア領内への使用、北大西洋条約機構(NATO)加盟国部隊のウクライナへの配置などさまざまな点に向けられてきた。

 そのようにプーチンが設定した敷居をレッドラインと称するならば、ウクライナはクルスク攻撃によって、ロシアのレッドラインを踏み越えたが、ロシアは核使用に至らなかった。それをどう見るべきだろうか。

 まず、実際上の問題としては、ロシア・ウクライナ戦争の戦場において、ロシアが戦術核兵器を使用しようとすると、いくつもの問題に直面することになる。

 第一に、軍事的に意味のある使用は可能か。第二に、自国にとってマイナス(軍事面、また、国土の放射線汚染など)を惹起しない核使用は可能か。第三に、大きな政治的・外交的なマイナスを惹起しない核使用は可能か。西側諸国や市民社会の非難は気にしないとしても、グローバル・サウスの国々の多くから強い反発を受けることになるとすれば、ロシアにとってもマイナスであろう。第四に、核使用に対して、どのような対応措置がとられることになるのか。

 上記論説は、ロシア軍内で核兵器の使用についての会話が行われていたことが傍受された際、米国は通常兵器によって「明確な帰結」をもたらすことをロシアに警告したとしている。第四の論点がロシアの核使用を阻んだとすれば、抑止が効いたということとなる。


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