4月8日、シャープの経営戦略説明会。片山幹雄社長は、業績下方修正と引き換えに、新しいビジネスモデルの導入を高らかに宣言しました。
リーマンショック後の急激な経営環境の悪化で、毎年恒例の新年経営説明会はとりやめ。2月初めの業績下方修正の場にも出席しなかったため、片山社長が会見の場に姿を見せるのは2009年3月期の中間決算発表以来でした。
この日も普通なら、単なる2度目の業績下方修正の場となってしまいそうなところです。それを「経営戦略説明会」と銘打ち、力強く経営方針の転換を訴えることで、翌日の記事をポジティブな内容に変えてしまうあたりは、シャープならではの巧みさがよく表れています。
輸出モデルから地産地消モデルへ
シャープが導入する新しいビジネスモデルは、「生産技術を売ってロイヤルティーや配当を得る」というエンジニアリング企業モデルです。
これまでは、「亀山モデル」と言われた液晶テレビに典型的に表れていたように、日本国内に大規模工場を立ち上げ、コア部分を集中生産。海外にあるモジュール工場に運んで最終製品化するという、「輸出」モデルであり、「垂直統合」モデルでした。
液晶テレビでいえば液晶パネル、太陽電池でいえば太陽電池セルといった、「前工程」の生産技術はシャープのコアコンピタンスであり、だからこそ、コストをかけてでも国内自社生産の垂直統合モデルにこだわってきました。これを海外に売り歩くというのだから、社運を賭けた大転換であることは間違いありません。
「シャープは,自社資金で工場を建設し,自社で生産した製品を販売してきた。こうしたビジネスモデルの限界が今回の業績悪化に結びついた。今後、エンジニアリング事業を進めていく背景にはこの反省がある。シャープ自身が大きく変わらなければならない」(片山社長)
会見中、「地産地消」というキーワードが何度となく使われましたが、虎の子の生産技術を売ってまでして、現地生産モデルへの転換を急ぐ背景には、これまでの高コスト体質を続けていては、現在のような経済状況では利益を出すことができない、との危機意識があります。土地代、人件費、税制、そして為替。日本で生産すれば必ず引き受けることとなる、これらのハンディキャップを抱えたままでは、いくら高品質であろうと、もう海外勢とは勝負にならないという認識を持っているのでしょう。
この認識は、本記事の第1回「復権図る日本勢をとりまく悲観論」、第2回「日本の強みとなすべきこと」で示した問題意識と軌を同じくするものです。