爆発物を仕込んだポケベルをヒズボラに販売したとされるハンガリーの首都ブタペストにある企業BACコンサルティング有限責任会社(KFT)は、イスラエルが設立したダミー会社だったとニューヨーク・タイムズが報じている。ポケベルを製造したイスラエル諜報員の正体を隠すために、少なくとも2つのダミー会社も設立されたという。
イスラエルはこの技術の開発に数百万ドルを投資しており、ナスララ師が携帯電話を禁止する遥か前から行われていた。爆弾が仕掛けられたポケベルは2022年夏に少数がレバノンに出荷され始めたが、ナスララ師が携帯電話の使用を禁じた後、出荷は急速に増加した。この夏には数千台が出荷され、ヒズボラの将校とその同盟者に配布されたという。
ヒズボラにとって、ポケベルの使用は盗聴を防ぐための防衛手段だったが、イスラエルでは諜報員らはポケベルを、機が熟した時に押せる「ボタン」と呼んでいたようだ。イスラエルの当初の計画では、ヒズボラとの全面戦争が勃発した場合のみにポケベルを爆発させ、ヒズボラの連絡網を立つことで戦争を優位に進める狙いがあった。
電池パックに組み込まれたPETNという爆発性の高い化合物は、検出するのが極めて困難だとされていたが、ヒズボラの2人の工作員が、ポケベルが改竄されていることに気がつき、イスラエルが急いで爆発させたとみられている。
BACコンサルティング社のホームページは9月18日の午前11時頃までは、「メンテナンスのためこのページは機能していません。後ほど再度ご確認ください」というメッセージが表示されていたが、今は完全にアクセスできなくなっている。
国際人権法に違反するテロ行為
9月20日、国連安全保障理次会の特別会合で国連人権高等弁務官のボルカー・ターク氏は、レバノンでのポケットベル爆破事件の首謀者たちは国際法に違反しているとして、首謀者と実行者に対する徹底的な捜査を求めた。
イスラエルが使用したと思われる今回のポケベルやトランシーバーに爆薬を仕掛ける方法は、ブービートラップ(booby trap)と呼ばれる。一見無害に見えるものに仕掛けられ、油断した兵士(booby:まぬけ)が触れると爆発し、殺傷する戦術だ。ただブービートラップは自陣に侵攻する敵勢力に対し、撤退する場合に用いられ、食料品、兵器などの兵士にとっての必需品や貴重品などの戦利品になりそうなものなどの残留物に仕掛けるのが通常だ。