2024年10月6日(日)

デジタル時代の経営・安全保障学

2024年9月25日

 ブービートラップは、ロシアのウクライナ侵攻でも使用されている。ゼレンスキー大統領は、22年4月に行われた虐殺を非難する演説で、ロシア軍が撤退時にブービートラップを仕掛けたとロシアを非難している。

 「彼らはこの地域全体に地雷を仕掛けている。鉱山の家屋、設備、さらには殺害された人々の遺体にまで仕掛けている」と述べた。ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は、集団墓地、子供のおもちゃ、リュックサック、学校、病院、アパートにも爆弾が仕掛けられたと主張している。

テロ国家に無力な国際法

 ブービートラップを仕掛けることは、国際法で違法であり明確なテロ行為である。ここでいう国際法とは、1980年に国連で採択され83年に効力を発行した特定通常兵器使用禁止制限条約(CCWC:Convention on Certain Conventional Weapons)を指し、現在、日本をはじめ127カ国が条約に締約している。

 第2議定書第3条第項で「過度の傷害若しくは無用の苦痛を与えるように設計された又はその性質上過度の傷害若しくは無用の苦痛を与える地雷、ブービートラップ又は他の類似の装置の使用は、いかなる状況下においても禁止する」とした上で、「第7条ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止」で、ブービートラップを「病人、負傷者、または死者」に取り付けてはならないと明記されている。にもかかわらず、ロシアはそれをやってのけているのだ。

 また、今回の事件のようにポケベルやトランシーバーに爆弾を仕掛けることは、「第3条8この条の規定の適用を受ける兵器については、無差別に使用することを禁止する。「無差別に使用する」とは、当該兵器に係る次の設置をいう。

 「(b)特定の軍事目標のみを対象とすることのできない投射の方法及び手段による設置」としている」と規定され、特定の軍事目標のみを対象とすることができない無差別な攻撃は、ブービートラップの中でも特にたちが悪いとされている。

 今回の攻撃で航空機の被害が出なかったことは不幸中の幸いといえるだろう。もし民間機の機内で爆発していたらと思うと身の毛もよだつ思いがする。

 国連でイスラエルへの非難が高まっているが、残念なことに、イスラエルは特定通常兵器使用禁止制限条約を締約していない。ロシアも北朝鮮も、そして中国も締約していないのだ。米国も国際情勢との兼ね合いで米国自身がブービートラップの使用を決めるとしており、国連や国際法の無力さを感じざるを得ない。

非難されるべきイスラエルの攻撃

 今回の攻撃は、イスラエル国防軍とモサドの共同作戦だったとCNNは伝えている。だとすれば非難されるべきはイスラエルだ。イスラエルはガザでいまなお虐殺を繰り広げている。

 開戦からもうすぐ1年になるが、ハマス保健省の発表によるとパレスチナ人の死者は9月23日現在で4万1455人に達しており、イスラエルは紛れもないテロ国家だといえる。そのテロ国家を支援し続ければ、また同罪といえるだろう。

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