2024年10月3日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月3日

 豪州が、エスカレーションを避けながら中国の侵略に対抗したいのであれば、独自の沿岸警備隊を発展させる必要がある。前方展開された沿岸警備隊は、南シナ海で中国と対抗し、米国と協力して活動できる。さらにマレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンの警察との協力も可能だ。専門の警察力を持つことは、比例的な対応を可能にし、緊張が偶発的に戦争に発展することを防ぐことができる。

 豪州に沿岸警備隊が設立されれば、南シナ海で中国に対抗する上で均衡の取れた役割を果たすことができるようになる。海軍による直接的なアプローチは緊張を高めるリスクがある。警察力は、このリスクを軽減し、比例的な対応を可能にするだろう。

 軍事能力を持った専門の沿岸警備隊の設立によって、豪州は効果的な対応をするために必要な部隊の編制を整えることが可能となるだろう。それは、豪州がグレーゾーン水域で勝利するために必要なものである。

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複雑すぎる豪州の海洋警備機関

 この記事は、豪州は南シナ海における中国の領土拡大に向けたグレーゾーン作戦に対抗するため、沿岸警備隊を設立すべきだと主張する。その理由として、①南シナ海における中国のグレーゾーン作戦に対抗できる、軍事能力を持った専門の沿岸警備隊は中国の侵略に対して「比例対応」を行える、②海軍対海軍による直接的なアプローチよりも緊張を高めるリスクが少ない、③豪州海軍は戦闘準備に専念できる、④米国等の沿岸警備隊との協力も容易になることを挙げる。

 豪州沿岸警備隊を設立すべきとの考えは、合理的な主張だろう。南シナ海のグレーゾーン対処(比例対応)の議論は理屈に合うし、それは豪州が主たる責任を持とうとしている太平洋島嶼国との関係でも重要になって来るだろう。

 独立した沿岸警備隊の設立論は、従来から豪州にあり、新たな議論ではない。しかし、それに対し、関係機関の活動の調整や運用の改善で対処すべきとの議論があった。恐らく関係機関の種々の権限の調整・統合や予算の問題、連邦と州の権限の問題があり、まとまらなかったのであろう。そのまま現在に至っている。


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