2024年4月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月28日

4) 米軍の偵察機E-2の能力は高度、距離において「遼寧」の使用する偵察機「卡-31」の能力をはるかに凌いでいる。

5) 空母は戦闘群を編成することによって強大な能力をもつ。米国の空母戦闘群は各種のタイプの艦船が共同して戦闘群を作るが、中国のものは米に比し、まだまだ初歩的である。米国の大型の空母戦闘群は一隻の空母に巡洋艦、駆逐艦、補給艦、潜水艦など数十隻の艦艇が編隊を組むが、中国のものはこれに比べれば、一つの「雛形」を有するにすぎないと言えよう。

 空母が実際の戦闘力となるには5年から8年ぐらいかかると言われており、早くて3年はかかると言われていることから判断して、中国の空母はこれから不断の改良、訓練を要することになろう、と述べています。

* * *

 中国の軍人の書いたものは、往々にして強硬論や虚勢を張ったものが多いのですが、この論考は、空母「遼寧」がまだ一つの「雛形」の段階にあり、米国の空母戦闘群には比すべきもない、と控えめに記述しています。あるいは、このような論考を公表することによって、外部からの「中国脅威論」を抑える意図を持っているのかもしれません。

 空母「遼寧」の限界は、既に多くの専門家の指摘するところです。特に、技術上の課題として、中国の新空母はまだ甲板上からの固定翼戦闘機の離着陸が十分にできるほどの能力を備えていない、とされています。

 ただし、種々の技術面での限界にかかわらず、周辺諸国から見て、中国の空母が遊弋するという事実が持つ心理的威圧感や存在感を否定することは困難です。その意味では、南シナ海において「遼寧」が海洋拡張主義の突破口を開いたというのは、誇張ではないのでしょう。

 今後は、尖閣や南シナ海、台湾海峡などにおいて、表向きは漁船や漁船監視船などの非軍事的手段を用いつつ、背後で空母戦闘群がそれを支援するという形をとる可能性があり、警戒を要するでしょう。

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