2024年10月3日(木)

BBC News

2024年10月3日

ヒューゴ・バチェガ中東特派員(レバノン・ダヒエ)、デイヴィット・グリッテン(BBCニュース、ロンドン)

イスラエル軍は2日、レバノン南部での戦闘で兵士8人が死亡したと発表した。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対して地上侵攻を開始して以降、同軍に死者が出たのは初めて。

ヒズボラは、戦闘中にイスラエルの戦車を破壊したと述べ、イスラエル軍を押し返すのに十分な人員と弾薬があると主張した。ヒズボラはイランの支援を受けている。

これに先立ちイスラエル軍は、レバノン国境の村にある「テロリストのインフラ」を解体する作戦に、さらに歩兵部隊と装甲部隊が加わったと発表した。

一方、レバノン当局は、首都ベイルート中心部でイスラエル軍による空爆があり、少なくとも5人が死亡、8人が負傷したと発表した。

爆撃を受けたビルは、ヒズボラ系の保健センターが入っており、レバノン国会や国連の地域本部のすぐ近くだった。

これまでのイスラエルによる攻撃で、ベイルートの中心部に被害が出たのは初めて。

レバノン保健省は2日夜、イスラエルによる空爆で過去24時間に46人が死亡、85人が負傷したと発表した。民間人と戦闘員が何人ずつだったのかは明らかにしなかった。

ヒズボラは2週間にわたるイスラエルの空爆やその他の攻撃によって弱体化している。レバノン当局によると、同国全土でこれまでに1200人以上が死亡し、約120万人が家を追われている。

昨年10月にイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスが戦争を開始して以来、ヒズボラはハマスを支援するとして、イスラエルに対する越境攻撃を続けていた。イスラエルは1日、ヒズボラの攻撃で避難したイスラエル北部国境地帯の住民を安全に帰還させたいとして、地上攻撃に転じた。

ヒズボラはイスラム教シーア派の政治・軍事・社会組織で、レバノンで大きな権力を握っている。イスラエルやアメリカ、イギリスなどからはテロ組織に指定されている。

レバノンへの地上侵攻2日目となる2日、イスラエル軍はヒズボラ戦闘員と初めて遭遇した。

イスラエル国防軍(IDF)はこの日の声明で、航空機の支援を受けた兵士たちがレバノン南部のいくつかの地域で「精密誘導弾と近距離交戦によってテロリストを排除し、テロリストのインフラを解体した」と述べた。

その後IDFは、兵士8人が戦死したと発表した。ほとんどがエゴズ部隊とゴラニ偵察部隊のエリート隊員だったとした。

うち6人はヒズボラ戦闘員に待ち伏せ攻撃され、残り2人は迫撃砲で死亡したという。

ヒズボラは2日早朝、国境沿いの村での衝突の際、戦闘員がイスラエル軍司令部に向けて対戦車ミサイルを発射し、数十人を死傷させたと発表した。

また、カフル・キラ近郊で別の部隊を爆発物や銃撃の標的にしたほか、マロウン・アルラス近郊ではイスラエルのメルカバ戦車3両をミサイルで破壊したと主張した。

ヒズボラはレバノン南部で長年、大規模な地下トンネルを含むインフラを構築してきた。また、この地域を知り尽くした数千人の戦闘員を抱えている。

ヒズボラがイスラエルに200発以上のロケット弾を発射

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、亡くなった8人の兵士に敬意を表し、兵士たちは「我々を滅ぼそうとするイランの悪の枢軸との厳しい戦いの中で倒れた」と述べた。

「こうしたことはもう起こらない。なぜなら我々は共に立ち向かい、神の助けを借りて、共に勝利するからだ」

IDFによると、2日を通して240発以上のロケット弾がレバノン南部からイスラエル北部に向けて発射され、イスラエルの防空システムが作動した。

前日の1日には、イランが180発以上の弾道ミサイルをイスラエルに向けて発射。イスラエルはその大部分を撃墜したとしている。イランはこの攻撃について、9月27日にイスラエルがレバノン首都ベイルートを空爆し、ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師とイランの最高司令官を殺害した報復だとしている。

ネタニヤフ首相は、レバノンでの地上攻撃はヒズボラの能力を低下させ、ヒズボラの戦闘員を押し戻し、最終的には約6万人のイスラエル人が国境近くの自宅に戻れるようにすると主張している。

こうしたなか、アメリカのジョー・バイデン大統領は、イランの核施設に対するイスラエルの報復攻撃は支持しないと述べた。また、イランの攻撃に対し、アメリカは「イスラエルとどうするか話し合うつもりだ」と付け加えた。

ベイルートの空爆受けた地域を取材

IDFは2日深夜、ベイルートで空爆を行ったと発表したが、詳細は明らかにしていない。同市に滞在中のBBC記者は、3回の大きな爆発音を立て続けに聞いたと語った。

イスラエルは前日の1日夜にも、ベイルート南郊にあるヒズボラの拠点ダヒエで激しい空爆を行った。開始前には、ヒズボラと関連があると発表した建物の周辺地域に避難命令を出していた。

BBCの取材チームは2日朝、ヒズボラが企画したメディアツアーに参加し、最近の破壊の様子を取材した。

かつては活気のある地区だったダヒエは、現在はゴーストタウンのようになっている。店は閉まり、通りは閑散とし、住民のほとんどは立ち退いている。

9月30日に攻撃を受けたシラトTVの本社は完全に破壊され、周辺の建物も深刻な被害を受けており、攻撃の威力の大きさを物語っていた。

がれきからはまだ煙が立ち上り、空気には強い臭いが立ち込めていた。上空からは、イスラエルのドローン(無人機)の音が聞こえていた。

現場には、ナスララ師の顔写真入りのポスターがいくつか貼ってあった。そのうちの1枚には「我々の旗はどれも倒れることはない」と書かれていた。

ヒズボラは、イスラエルが軍用ではない民間施設を攻撃していると主張している。一方のイスラエルは、ヒズボラが住宅地に武器や弾薬を隠していると非難している。

アメリカとイスラエルの当局者は、ヒズボラの兵器の半分が破壊され、その指導部は解体されたと考えている。

しかし、ヒズボラのモハメド・アフィフ報道官は、依然として強気だった。

「抵抗活動は急速に力を回復しつつある」と、アフィフ氏はBBCに語った。「抵抗活動の指揮系統は健全であり、ロケット弾の供給も十分だ」。

「神の加護があれば、イスラエルがレバノンに侵攻した際には、我々は敵に敗北を味わわせるだろう」

ダヒエと同様、ヒズボラが強い影響力を持つベカー高原の南部と東部からも、多くの人々が避難している。

ベイルートの殉教者広場は、行き場を失った数十家族が集まる場所となっている。

コンクリートの壁の近くにテントがいくつか張られているが、多くの人々は近くのモハメド・アル・アミン・モスクの階段や地面に敷いたマットレスの上で寝ている。

55歳のモハメドさんは、妻と息子、7人の孫たちと一緒に5日前にここに到着した。避難所に移ろうとしているが、場所が見つからないとモハメドさんは語った。

「行くところがない」とモハメドさんは言った。寄付のおかげで食べ物は確保できているが、おむつやミルク、薬がなくて苦労しているという。

その隣には、3人の子供たちと一緒にやってきた26歳のモハメドさんがいた。

モハメドさんはダヒエで働いていたが、店がすべて閉まったために仕事を失ったという。「働き口がない」のだと、モハメドさんはBBCに語った。

(英語記事 Eight Israeli troops killed in fighting with Hezbollah inside Lebanon

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cpv21kkv1pjo


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