漁業法改正の
不可解な点とは?
漁業法改正には上記のようなポジティブな影響だけでなく、不可解な論点も含まれていた。水産庁はシラスウナギ採捕の知事許可漁業移行に関して、各都府県に対して独自の上限設定を行わないよう求めた。
水産庁長官から都道府県知事に当てられた文書には『合理的な根拠のない採捕数量の制限を条件とすることは適当ではない』とあり、説明会ではその根拠として上記の日中韓台の池入れ量上限の存在を挙げている。全体の池入れ量上限があるのだから、個別の上限は不要である、という理屈である。
非常に興味深いことに、水産庁が都府県の上限設定に合理的根拠を求めている一方で、その指導の根拠としている日中韓台の池入れ量上限には一切の科学的根拠がない。それだけでなく、基準年には上限の引き上げを狙い、過剰な報告が行われたことが強く疑われている。
不合理な全体の上限に基づいて、個々の上限の設定を制限しようとする姿勢は不可解であり、どのような背景に基づいてそのような指導がなされたのか、明確にする必要がある。実際のところ、都府県はこの指導に困惑し、独自の上限を設定する地域としない地域に分かれてしまった。
資源管理の論拠をより確実にするためには、密漁や無報告を減少させ、より詳細で正確な漁業データを得る必要がある。漁業法改正に続き、「水産流通適正化法」が来年12月からシラスウナギに対して適用されることになり、その効果が期待される。
この法律のもとでは、正規に漁獲されたシラスウナギに「漁獲番号」が与えられ、その流通が管理される。シラスウナギは小さく、一匹ごとに管理するのは困難であることから、量単位で漁獲番号が与えられることが想定される。トレーサビリティーの実現に近づく第一歩ではあるが、対象となるのは国内で採捕されたシラスウナギのみであり、国外から輸入されるシラスウナギは対象とならない。
今後、輸入されるシラスウナギも水産流通適正化法の対象とすることが望まれるが、それが実現するまでの期間は、国内で適切に漁獲され、漁獲番号が与えられたシラスウナギのみを扱うことで、ウナギを商材とする企業・団体はコンプライアンスをある程度守ることができるだろう。これに対して、国内で採捕され、漁獲番号のついた、適法なシラスウナギを仕入れることが可能であるにもかかわらず、密輸などの違法行為が関わっている可能性の高い輸入されたシラスウナギを扱い続ける企業や団体は、法令遵守の精神に欠けていると見なされるリスクが高まるだろう。