2024年10月28日(月)

Wedge REPORT

2024年10月24日

日本企業の出遅れ感
好機をフイにしないために

 中東ではイスラエルも軍事技術のデュアルユース(軍民両用)戦略で通信や宇宙、医療、セキュリティーなどの様々なベンチャー企業を育て、海外からも多くの企業を呼び込むことで経済発展を遂げた。インテルやマイクロソフト、モトローラなどの欧米企業が多数進出し、IT分野の重要なハブとなっている。

 そうしたイスラエルの最新技術を取り込もうと韓国や中国は早々と直行便を飛ばし、密接な協力関係を築いてきた。しかしデュアルユースにアレルギーを抱く日本の政府や企業はイスラエルと距離を置き、現地進出に二の足を踏んできた。

 もちろん現在のイスラエルの軍事行動は憂慮すべき事態であることは確かだ。ただ日本はUAEについても「中東」としてひとくくりにし、進出に慎重な面が否めない。UAEに拠点を置く日本企業は約360社に増えたものの「中国はこの間に5000~7000社が進出している」と磯俣秋男駐UAE特命全権大使は日本の出遅れ感を指摘する。

ITS世界会議の「JAPANパビリオン」の開幕式で挨拶する磯俣秋男駐UAE特命全権大使(筆者撮影)

 日本大使館の乾有貴参事官も「韓国、中国、インドの企業進出が際立っている」と語り、「急激なスピードで成長するUAEに日本も追いついていくべきだ」と主張する。現地の日本貿易振興機構(JETRO)ドバイ事務所でも「製造業を持たないUAEと日本はよい補完関係を築ける」と強調する。

 UAEの人口約1000万人のうちUAE人はわずか1割の約100万人。9割はインド、エジプト、パキスタンなど近隣諸国からの出稼ぎ組で、国全体の平均年齢は実に28.7歳。日本の平均年齢48.4歳に比べ20歳も若く、そうした人たちがUAEの経済発展を支えている。

 UAEにある世界一高いビル、ブルジュ・ハリファの建設は韓国のサムスン物産が担ったが、光通信やITS、ゲーム・アニメのようなコンテンツ分野では日本に一日の長がある。そうした日本の強みを世界に広めるには、UAEのような最先端技術のテストベッドを上手に生かす、ある意味での狡猾さが日本の政府や企業に必要である。

ドバイ市内にそびえたつ世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」(筆者撮影)

 現地進出を目的化すべきではないが、デジタルが促すモビリティー革命の大競争時代を迎えた今、日本の出遅れは避けなければならない。家電分野で韓国や中国企業の先行を許してしまった歴史を繰り返すべきではないだろう。日本の国家戦略、企業戦略の再構築が急務である。

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Wedge 2024年11月号より
民主主義は 人々を幸せにするのか?
民主主義は 人々を幸せにするのか?

「民主主義が危機に瀕している」といわれて久しい。11月に大統領選を控える米国では、選挙結果次第で「内戦」の再来が懸念されている。欧州では右派ポピュリズムが台頭し、世界では権威主義化する民主主義国も増えている。さらに、インターネットやSNS、そして、AIの爆発的な普及により、世の中には情報が溢れ、社会はより複雑化している。民主主義が様々な「脅威」に晒されている今、民主主義をどう守り、改革していくのか。その方向性を提示する。


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