2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月4日

 日本が真摯であることを中国や韓国に納得させるために、日本に出来ることはあるであろうか。戦後70年経ち、多くの日本人が、中国を犠牲者としてよりもライバルとして見るようになった今、その答えはおそらく否であろう。出来ることの一つは、靖国に代わる非宗教的追悼施設を作ることである。そういう場所の一つとして、無名戦士のための千鳥ヶ淵墓苑がある。

 A級戦犯を分祀して靖国を「浄化する」という案は宙に浮いてしまっている。しかし、靖国は、軍国主義的、人種差別的、帝国主義カルトとあまりにも強く結びついているので、矯正しようがない。日本の首相が、靖国を避け、千鳥ヶ淵に向かうことになったとしても、中韓をなだめるのに十分ではないだろうが、少なくとも、ある種の真摯さを示すことにはなろう、と述べています。

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 ピリングは、フィナンシャル・タイムズ紙の東京支局長も務めたことのある人物で、アジア情勢に鋭い観察を示すことも少なくありませんが、日本の歴史認識問題については、厳しい姿勢を示してきました。この論説も、日本の謝罪は遜色があるわけではない、と中立的なことを言いつつも、結局は、従来の姿勢を踏襲しています。

 ただ、それは、ピリングの個人的問題というよりは、ことこの前の戦争については、勝者は善、敗者は悪という、英国のナショナリズムをなかなか脱皮できない、英国マスコミに共通した傾向です。その点、同じアングロサクソンであっても、さすが多くの価値観を受け入れる伝統のあるアメリカの評論の方が、度量が広い所があります。

 代替施設建設案は、従来とも色々ありますが、例えば、民主党政権成立の前に、鳩山代表、岡田幹事長によって推進されたことがあります。しかし、当時の民主党政権の勢いを以ってしても、激しい反対があり、実現していません。

 やはり、近代日本を建設した明治維新、日清、日露の戦争以来の犠牲者を祭り、まして、「靖国の社で会おう」と言って死んだ先の大戦の英霊を考えると、日本人の国民感情の中に深く根ざした施設であり、新たな人工的な施設では到底代替できない、理屈では説明し難い何かがあるのでしょう。

 代替施設案は、思いつきとしては誰でも思いつくものであり、特に外国人の場合、そういうアイディアが出てくるのは無理もありませんが、日本の実体とはそぐわず、国民感情として到底不可能な提案と考えるべきでしょう。

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