2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月6日

 フィナンシャル・タイムズ紙の10月8日付け社説‘Ukraine’s shifting war aims’が、欧米諸国そしてキーウでも、領土の全面的な回復はなくとも交渉による戦争の終結が最善かも知れないという認識が語られ始めているが、このような縮小された目標を達成するのに必要な支援すらウクライナに与えられておらず、西側はウクライナが交渉で強い立場に立ち得るよう支援すべきであると論じている。要旨は次の通り。

ゼレンスキー大統領がプーチン大統領と交渉をすることはできるのか(ロイター/アフロ)

 ウクライナは三度目の戦争の冬を迎えるが、ムードはこれまでになく暗い。東部では、部隊はじりじり前進するロシア軍を前に後退しつつある。その間、欧米、そしてキーウでもムードは変わりつつある。

 すなわち、ロシア軍がウクライナから追い出されてのみ戦争は終わるという決意から、国の大部分を手つかずのまま残す交渉による決着が最善の希望かも知れないという認識に変わりつつある。しかし、キーウはその縮小された目標を達成するのに必要な支援すら与えられていない。

 ウクライナにとっての展望は、トランプが大統領選挙に勝ち、戦争の迅速な終結を求めるという危険によって、殊の外暗くなっている。

 中東のエスカレートする戦争に同時に直面し、プーチンを軍事的に敗北させる必要を強調していた幾つかの西側の政府すら、彼らの目標を再調整しつつある。キーウの当局者も、ロシアに占領されているすべての領土を回復するための人員、火力、西側の支援を欠いていることを内々心配している。

 水面下では、モスクワはウクライナのほぼ5分の1の事実上の支配を維持する(ロシアの主権は認められない)が、国の残りの部分は北大西洋条約機構(NATO)加盟が認められる、あるいは同等の安全の保証が与えられる、という取引が語られている。この傘の下で、冷戦期の西独のように、ウクライナは再建を果たし欧州連合(EU)と統合することが可能となろう。

 しかしながら、このシナリオは野心的な想定に依存している。一つは米国とその同盟国はNATO加盟か、もしくは必要な保証を与える用意がなければならない。しかし、これまでのところ、彼らはキーウにNATO加盟に至る拘束力のある道筋を認めることを躊躇している。

 第二の想定は、プーチンがそのようなシナリオを交渉し受け入れるという想定である。しかし、ウクライナのNATO加盟を阻止することが彼の名目上の戦争目的の一つであった。彼がなお占領地を拡大出来ると信じている状況で、彼に和平と土地の交換の交渉に同意するインセンティブがあるかは疑わしくもある。


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