共和党の政策綱領とEV
大統領選挙の共和党の政策綱領は、民主党の政策綱領の約8分の1の字数と簡潔だが、その中に共和党大統領の下、上下院で多数派を形成した場合に実行される20の約束が書かれている。15番目には「EVの強制化の廃止、費用が掛かり負担となる規制の中止」とある。
民主党の政策綱領は輸送部門からの温室効果ガスの排出が最も多いことに触れ、30年の新車販売台数の50%をEVにする目標、スクールバスの電動化などの具体策を掲げ環境問題の解説もある。両党の綱領は対照的だ。
政策綱領は、両党の支持者のEVに対する評価の違いを反映している。今年6月の調査会社オートパシフィックの研究調査によると、EV保有者の54%は民主党支持、30%が共和党支持。EV購入を検討するとの回答者の内46%が民主党支持、28%が共和党支持、購入しないとの回答の内40%が共和党支持、28%が民主党支持だった。
EVを購入しない理由(複数回答)の1位は、充電時間が長い(52%)、2位充電設備が自宅にも職場にもない(51%)、3位価格が高い(49%)だったが、政治的信条の違いも8%あった。
目の敵にされるメキシコ産自動車
選挙キャンペーン期間中に、トランプはメキシコからの不法移民と貿易関係に触れている。もし、メキシコが不法移民の送り込みを止めなければ、全ての米国向け輸出品に25%の関税、それでも止まらなければ75%の関税を課すと発言している。
自動車については、もっと高い税率にも触れている。中国の自動車メーカーがメキシコに工場を建設し米国向けにEVを輸出する計画があることを踏まえ、「国境のすぐ向こう側に工場を建設し、自動車を輸出することで、米国とデトロイトを破壊するのであれば、メキシコ産の自動車には200%の関税を課す」と表明している。
当初は100%の関税と発言していたが、後半の演説では200%に上がった。演説中には500%という数字も出ている。この発言を文字通り解釈すると、EVだけではなく全てのメキシコ産自動車が関税の対象と取れる。
メキシコには、早くから日産自動車が進出し、人気大衆車のサニーをベースにしたメキシコ仕様車「ツル」を販売していた。今でもメキシコでタクシーに乗ると「ツル」に出くわすことがある。
日産だけでなく、トヨタ、ホンダ、マツダも工場を持っている。日本メーカーだけでなく、フォルクスワーゲンなどのドイツメーカーも工場を持つ。23年のメキシコから米国への輸出台数は250万台だ。
24年1月から9月の米国向け自動車輸出額のトップはメキシコ、第2位が日本だ(図-1)。マスクは、昨年3月にギガファクトリー(大規模工場)をメキシコに建設すると発表したが、その後全く進展はない。様子を見ているのだろう。
そんな中、トヨタがメキシコへの追加投資を行うと報道された。トランプの発言は必ずしも実行されるわけではないので、関税は課せられないとの判断だろうか。