トランプは、キャンペーン中、欧州連合(EU)に対しても貿易が不均衡と不満をぶつけている。「EUが米国産農産物、自動車の輸入を増やさないのであれば、EUからの輸入品に10%の関税を掛ける」と発言している。
図-2が米国での今年上半期の自動車メーカー別のシェアを示している。現在の自動車の課税率2.5%が大きく引き上げられ、仮に10%の関税が課せられるとすると、シェアが高い日本メーカーにも大きな影響がある。
EVが伸びる米国市場の今後は?
バイデン政権は、米国製EV購入には最大7500ドル(約110万円)の税還付制度を導入している。さらに、充電ステーションの整備、EV製造、バッテリー製造も補助している。
キャンペーン中にトランプは、就任一日目にEVへの補助を廃止すると述べており、インフレ抑制法のEVに係る部分の執行を停止する可能性が高い。
米国のEV販売の伸びは鈍化しているが、9月の実績ではバッテリー稼働(BEV)のシェアが7.7%、プラグインハイブリット(PHEV)のシェアが2.0%、合計9.7%と、今年上期の実績合計9.1%よりわずかだが伸びている。ちなみにハイブリッドのシェアも上期の9.1%が9.6%に上昇している。
税還付は販売に好影響を与えているだろうが、昨年EV購入時の補助金が打ち切られ、一時販売が大きく落ち込んだドイツではEV販売は回復している。
BEVあるいはPHEVを好む消費者の多くは税還付制度にかかわらず、EVを購入すると思われるので、EV販売の落ち込みは短期間で終わるのではないだろうか。
イーロン・マスクの思惑は
なぜマスクはEV推しではないトランプの支援に回ったのだろうか。トランプが大統領になればEVへの風当たりが強くなり、テスラの販売も影響を受けるはずだ。
その状況でもテスラにはメリットがあるとの判断だろう。バイデン政権のEV支援のメリットを大きく受けたのは、EV専業メーカーのテスラよりも製造面の支援も受けたGMやフォードだった。
米国でのEV販売台数が増えている中で、テスラの販売台数は頭打ちになりEV内のシェアは下落を続けている(図-3)。
競合相手よりメリットが相対的に少ないのであれば、補助がなくなればテスラの相対的競争力は優位になり、販売の落ち込みが短期間で終われば、テスラにはプラスのはずだ。