海外のハロウィンイベントとの比較
「主催者がいない」という渋谷ハロウィンは世界的に見ても稀なイベントと言える。国内外では、どのようにイベントは運営されているのだろうか。
米国・ニューヨークのヴィレッジ・ハロウィンパレードは、1974年に始まり、毎年多くの観光客が訪れる大規模なパレードである。このイベントは市の公認で、道路封鎖や警備、ゴミの管理が行われている。
参加者も決められたルートに沿ってパレードを楽しむ。秩序が保たれつつも、自由な仮装が許される点が魅力である。渋谷ハロウィンとは異なり、会場が設けられ、参加者が集中的に活動することで、管理しやすくなっている。
芸術的功績や経済にもたらす貢献も大きく、ニューヨーク芸術協会(Municipal Arts Society of New York)や街の文化を保存するための非営利団体から、人々の文化的な生活に大きな貢献をしたとして賞を贈られており、国立芸術基金(National Endowment for the Arts)、市長観光助成金(Mayor’s Tourism Grant)、マンハッタン区長観光イニシアティブ(Manhattan Borough President’s Tourism Initiative)から、多額の助成金が出ている。
公式サイトは、このパレードは「何十万人もの観光客、および推定9000万ドル(約133億円)の観光収入をもたらす」としている。
もともとハロウィンは収穫祭や悪霊払いに由来しており、ヴィレッジ・ハロウィンパレードも、家族向けを意識して構成される。仮装、出し物、山車も子どもが喜びそうな仕掛けもある。
渋谷ハロウィンと非常に性質が似ているイベントとしてイギリスのノッティングヒル・カーニバルがある。ロンドン西部で毎年8月に開催されるカリブ文化を祝うイベントで、カリブ系住民らが軽快な音楽に合わせて踊り、街を練り歩く。毎年約100万人が参加する欧州最大級の祭典で、多民族・多文化都市としてのロンドンを象徴する。
カーニバルは50年以上の歴史を持つが、1970年代はカーニバル期間中となると万引きや盗難といった犯罪が多発していたため、警察は厳しい取り締まりを行っていた。しかし、最近では、警察官がパフォーマーとの記念写真に応じたり、自ら踊りを披露したりと、協力的な姿勢を見せている。
地元住民や警察との連携が密に行われ、企業スポンサーもいることで地域に対する経済効果も大きく、観光資源として認知されている。JN 銀行の経済学者ジェームズ・ウィリアムズ氏は、ザ・ヴォイスが委託した調査で、直接的または純経済的影響は年間 3 億 9600 万ポンド(約780億円)を超え、宿泊、食事、買い物、娯楽、旅行への多額の支出がその総額に寄与していることを明らかにした。
ウィリアムズ氏の分析は、2003 年以来カーニバルの経済的影響を調査する初の調査であり、ヨーロッパ最大のストリート フェスティバルは 3000 人分のフルタイム雇用を支え、毎年約 16 万人の海外観光客を惹きつけていることがわかった。
興味深いのはイベントに対して「地元のオーナーシップ意識」があることである。ロンドン市長は、23年に運営費の増加、追加準備、群衆管理サポートのために、94万6300ポンドを支出している