2025年1月10日(金)

WEDGE REPORT

2024年12月9日

日本も舞台に

 実のところ、このような北朝鮮と関連するスパイ事件は韓国建国以来、数十件以上起きている。その中には、日本を舞台にした旺載山事件(12年)もある。

 同事件に関して国家情報院は、朝鮮総聯の最高幹部が北朝鮮工作機関「225局」(上述、文化交流局の前身)の日本地域責任者であると指摘し、東京・立川市のホテルで北朝鮮工作員と秘密接触する場面の撮影に成功している。

 数十件以上のスパイ事件をお伝えする余裕はないが、内乱を企てた政党が存在したり、野党の支持基盤である労組がスパイ活動していたりしたことは、紛れもない事実。尹大統領が戒厳宣布に際して、「反国家勢力による大韓民国体制転覆の脅威」としたのは、これら事実の裏付けがあってのことなのだ。

 このような話を書くと、権力のでっち上げだという声が上がってくるので、北朝鮮を秘密裏に訪問し、金日成の指示で地下組織「民族民主革命党」を建設した主体思想派の元リーダー、金永煥氏の回顧から引用する。

(筆者注:2013 年の統合進歩党事件に関連した不正選挙事件に関して)選挙人名簿を裏で入手して重複投票したり、世論調査の結果を左右したりするくらいの行為は、「従北」勢力であれば京畿南部だけでなく、どの地域の主体思想派にとっても一抹の良心の呵責なしに実行できるだろう。彼らは「正義の目的のためにはどんな手段も許される」「敵がやるのなら自分たちもやるべきだ」との意識を絶えず反復しながら生きてきた人々なのだ。

 本稿に記した野党や労組幹部によるスパイ事件、北朝鮮から直接指示を受けた地下組織の事件は、氷山の一角だ。韓国政治を専門にする東海大学の金慶珠教授は、4日に出演したニュース番組で、「労組やインターネットメディアが北朝鮮から指示を受けているのは『ない』話ではないと多くの人が認識している」と述べている。

 最後に、野党による尹大統領の弾劾訴追案の結論部分の一部を紹介する。

 いわゆる価値外交という美名の下で、地政学的バランスを度外視したまま北朝鮮と中国、ロシアを敵対視し、日本中心の奇妙な外交政策にこだわり、日本に傾倒した人事を政府の主要職位に任命するなどの政策を展開することによって北東アジアで孤立を招き、戦争の危機を誘発させ、国家安全保障と国民保護義務を放棄してきた。

 この北朝鮮公式メディアの論評と見まがう認識が野党から出されるような状況こそが、尹大統領に非常戒厳という悪手を決断させたのだろう。日本人は、再び混沌に陥った韓国政治がこのような野党の手に渡る可能性があることを覚悟しておかなければならない。

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