北朝鮮の奇襲や挑発に即応
北朝鮮と対峙する韓国軍は、これで良いのだろうか。北朝鮮の攻撃は火砲やミサイルなど一見して武力行使とわかるやり方で行われるとは限らない。サイバー攻撃もあれば、特殊部隊による暗殺やインフラへの攻撃などその手法は多岐にわたる。
もちろん、指揮命令系統を混乱させるため、通信を妨害して偽命令を流したり、インターネットのコメントやSNSで出動を批判する偽情報を書き込んだりと、情報戦も活発に展開するだろう。
このような高度化した「戦場の霧」に対して、いちいち命令は正当かと疑い、命令に従うことで犯罪者にされるかもしれないと、任務遂行を躊躇する心の隙を韓国軍に植え付けてしまった。
軍事学では、戦場における力と運動の中心を指す概念を「重心」といい、いかに敵の重心を崩すかが勝利の要訣とされる。軍隊において、指揮命令系統は重心の中の重心だ。そこに綻びを見せた韓国軍が、北朝鮮の奇襲や挑発に即応できるとは思えない。
尹大統領による非常戒厳とそれに対する弾劾について、日本メディアには熱くなった韓国世論に引きずられる論調が目立つが、一連の動きが韓国軍に混乱をもたらし、それが日本の安全保障にも大きな影響をもたらすという視点も忘れてはならないだろう。