2025年2月15日(土)

商いのレッスン

2024年12月21日

 需要減少の結果、業界には値引き販売が横行。価格は下がり続け、そのしわ寄せは作り手である職人に及んだ。伝統的な業界ゆえに、その伝統が変化への対応を邪魔した。節句人形は、人形のパーツを作る職人、組み立てる職人、それらを差配する卸、そして販売店という多層的な構造を持つ。その複雑さも、変化への対応を遅らせた。

お客様以上にお客様を知る

 原さんは、こうした業界の呪縛から自由になろうと「ふらここ」を2008年に創業。顧客ニーズに耳をすませ、コンバクトなサイズ、赤ちゃん顔のかわいらしいデザイン、インターネットによる販売、製販一体のビジネスモデル、そして職人を大切にする経営を追求し、かつて、キャンセルせざるを得なかった若い母親が抱えていた悩みに応えるプロモーションを続けた。

 結果、値引きとは無縁で、創業から15年間で売上高を13倍に伸ばした。原さんは、節句人形を買う「3分の1」のマーケットを狙って価格競争をしたのではなく、節句人形を買わない「3分の2」のマーケットの〝買わない理由〟を解消していったのだ。

 商売とは、不便、不満、不足、不利、不快といった「不の解消提案業」である。あなたの商売に見落としている「不」や、伝えたつもりで伝わっていない「提案」はないだろうか。

 「いくら素晴らしいものを作っても、伝えなければ、ないのと同じ」と数々の創造的商品を生み出し、新たな市場を創造したアップル創業者のスティーブ・ジョブズは言っている。

【商いの言葉】
お客様の心を
自分の心と重ねられたとき
本当に伝えるべきことは
おのずと見えてくる
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Wedge 2025年1月号より
移民問題に揺れる世界 水面下で進む日本人の海外流出
移民問題に揺れる世界 水面下で進む日本人の海外流出

世界は今、移民・難民問題で大きく揺れ動いている。事実、2024年11月の米大統領選挙では、不法移民対策が大きな争点となった。彼らは命がけで故郷を離れ、今この瞬間も、米国や欧州大陸を目指し、移動を続けている。その光景は、戦前・戦後に日本人が「出稼ぎ移民」として、ブラジルやパラグアイを目指した姿とも重なる。翻って、現代日本。かつての状況と異なるものの、今、静かに日本人の海外流出が続き、23年の永住者は調査開始以降、最多の約57万5000人に達した。豊かで暮らしやすいと思われている日本から、なぜ日本人は〝脱出〟していくのか。彼らの動きが物語ること、そして、これからの日本社会に必要なことを考えたい。


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