――少子化対策として待機児童問題の解決は有効ですか。
出口:かなり重要でしょう。なかなか保育所が見つからないから、夫と偽装離婚の話をした、という話を耳にしたことがあります。私はこの話を聞いて、はらわたが煮えくり返りました。かわいい赤ちゃんを産んでくれたカップルにそんなことを考えさせる国が、将来栄えるわけがありません。
――高齢者向けの予算に比べ少子化対策の予算はとても少ないです。ようやく、政権は7000億円の予算を投じると言いましたが足りるでしょうか。
出口:外国人から見れば、90兆円規模の予算をつくっている国が10年以上の年月をかけて待機児童をゼロにできないのは理解できないでしょう。高齢者にはあなたと孫とどっちが大事ですかと問いかければいい。みんな孫がかわいいはずです。フランスのようにワンセットの政策を直ちに実行する。小出しはいけません。
――本誌3月号特集で紹介していますが、認可と認可外、社会福祉法人の問題、ほかにも幼稚園と保育園の問題など、保育分野にも既得権益があります。整理しないまま予算をつぎ込んで大丈夫でしょうか。
出口:供給が足りないんですから、供給者の資質は一切問わない、とすればいい。認可も認可外も、幼稚園も保育園も、何の区別もしないと、総理が言い切る。PACSと同じことですね。
自治体の仕事は、施設環境や衛星面について最低基準を示し土俵をつくること。そして、いいサービスをしたところにはたくさん補助金をつければいい。それも自治体が判断するのではなく、お母さん方に投票してもらうような発想で。
――保育士が足りません。人口減も少子化対策だけで止められるかどうか。移民の受け入れについてはどうでしょうか。
出口:アメリカの活力の源泉は、大学の競争力が高いことにあります。欧米は世界の優秀な若者を取り合っています。労働力を入れるには、まず大学からです。
でも、各大学に任せていたらいつまでたってもできない。総理が文部科学大臣に指示をだせばいい。来年から秋入学。5年以内に、大学院は半分以上の授業を英語で実施しなければ補助金は出さない、とね。ただでさえ日本の大学の国際ランキングが低いのに、入学時期などにハンデがあって学生が集まるわけがありません。少子化対策と大学の国際化をワンセットで実行すべきです。
■WEDGE3月号特集『64年ぶり「保育」大改革 「待機児童ゼロ」国の本気度を問う』
◎過熱する「保活」母親たちのイス取り合戦
◎2015年度開始「子ども子育て新制度」の内実
◎小規模保育充実の裏で忍び寄る「3歳の壁」
◎株式会社参入阻む「社会福祉法人」の闇を暴く 藤井賢一郎(上智大学准教授)
◎ライフネット生命 出口治明会長インタビュー 「少子化は文化を滅ぼす」
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