2024年12月26日(木)

プーチンのロシア

2024年12月25日

撤退も困難か

 ロシアは従来、シリアの反体制派を「テロリスト」と呼び、ロシア国営メディアがシリア国内の天気予報を流して「今日は空爆日和です」などとキャスターが発言をするなど、国を挙げてアサド政権を擁護していた。その作戦は成功裏に進み、ある意味〝浮かれて〟いたともいえる。

 しかし、アサド政権崩壊以後は、反体制派勢力をテロリストと呼ばず、手のひらを反している。彼らを相手に、基地使用権益の存続に向けた交渉を進めざるを得ないからだとみられる。

 残されていたロシア軍の兵力がシリアから撤退をしているのかは不透明だが、一部を除きそのような動きはわずかなようだ。

 タルトゥース海軍基地をめぐっては、ロシア海軍の艦船は現在、トルコが軍艦船の航行を禁じるトルコ海峡を通って黒海のセバストポリなどに移動することができない。またフメイミム航空基地からも、兵力の撤退には数百機の軍用輸送機が必要になるとの指摘がある。現在のロシア軍に、そのような輸送力をシリアのためにロシア軍がさけるのかは不透明だ。

 一部の報道では、12月7日にロシア軍のイリューシン76などの複数の軍用輸送機がロシアから飛来した後、再び同基地からロシアに戻った事実が衛星画像から確認されているが、何を、どれほど運び出したかなどは不透明だ。

米国などは攻勢

 欧米はシリアに対するロシアの影響力を排除する動きを強めている。米国は12月20日、外交団がシリアの首都ダマスカスを訪問し、暫定政権トップのジャウラニ氏と会談。同氏をめぐる情報に対して報奨金を出すとしていた従来の方針を撤回すると表明するなど、ロシアやイランなどが後ろ盾となっていたシリアを取り込む姿勢を鮮明にしている。欧州連合(EU)は外交幹部が12月16日、「イスラム過激主義とロシア、イランは将来のシリアにおいて存在すべきではない」と明言するなど、ロシアの影響力を排除する方針を示した。

 ロシアがシリアの2基地から撤退を余儀なくされる事態が起きれば、それはプーチン政権にとり、海外の利権を失うだけでなく、国内においても厳しい失態と映るのは必至だ。暫定政権側と基地の利用継続で合意できても、それは一時的なもので、自らが後ろ盾となっていたアサド政権のもとで基地を運営できた環境が戻ることはない。

 シリア情勢をめぐっては、隣り合うトルコの影響力増大や、国内の勢力間で対立が激化するなど不透明な要素が少なくない。ただ、1000日以上にもおよぶウクライナ侵攻に自ら手をかけたロシアが、アサド政権崩壊という厳しい痛手を被ったことは間違いない。

 

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