ラザルスがさらに世界を驚かせたのが、16年のバングラディシュ中央銀行から8100万ドルを不正送金したハッキング事件だ。北朝鮮の核・ミサイル開発は、これらハッキングなど不正な手段で得た資金で行われているとみられている。
目的は身代金ではなく、事業の麻痺
このように国家が関与するサイバー攻撃は、戦争の新しい形である「全領域作戦」(ALL-Domain Operations)の一環として行われている。全領域戦とは文字どおり、陸海空など古典的な領域(ドメイン)に加え、サイバーや情報、宇宙、電磁波にまでドメインを拡大して、常に「競争」が行われている状態をいう。
各国とも全領域作戦に注力しているが、ロシアと中国にその姿勢が顕著だ。中国はこれまで宇宙やサイバー領域を担当してきた「戦略支援部隊」を廃止し、今年4月、「情報支援部隊」として発展強化させた。
今回のJALへのサイバー攻撃の主体はいまだわからないが、身代金目的のランサムウェアなどと異なり、事業を麻痺させる目的で攻撃してきたことは明らかだろう。日本は新しい戦争の形として遂行されるサイバー攻撃にさらされているが、カウンターの手段は持っていない。「能動的サイバー防御」の法制化が急がれるだけはなく、自衛隊へのサイバー空間防衛の権限付与など早急な対応が望まれる。