「このまま日本にいても同じ」
社会人が日本を飛び出す理由
ワーホリの年齢制限は30歳以下だ。ゆえに社会人を経験してからその一歩を踏み出す若者も多い。「英語を学びたい」「海外で生活してみたい」という動機に加え、彼らの口からはこんな理由も耳にする。
「残業は多い時で月に100時間。労基法違反にあたるが、80時間以内に過少申告させられていた」
「常に余裕がなさそうな上司の働き方を見て、こんなふうにはなりたくないと思った」
共通しているのは、日本で働き続けることへの失望感だ。カナダ在住の白木真希子さん(仮名、29歳)は、建築関係の会社で6年働いた。
「営業をしていたときは、『頑張ってもこれだけしか給料もらえないの?』みたいな絶望感がありました。上司の長話にも付き合わされたりと、会社勤めに疲れました」
このまま日本で過ごしても何も変わらないと思い、今年2月、以前から興味があった海外生活のために会社を辞め、カナダへと渡った。英語も基礎しかわからない状態で語学学校に通い、3カ月で終了。手当たり次第に履歴書を持ち込んだ結果、日本料理店でのアルバイトが決まり、時給17カナダ・ドル(約1900円)で働いている。チップも副収入として入るため、多い時で月収3800カナダ・ドル(約42万円)にもなるという。
「日本よりも全然稼げます。味を占めてしまったら、日本に帰れないです。ただ、何の保証もないですけど。いつクビにされるか、シフトを減らされるかは分かりません。安定がない分、頑張らなくてはいけないです。どっちを取るかですよね」
英国で2年間、ワーホリを経験した大島美樹さん(仮名、33歳)は、現地のスポーツ系メディアでマーケティングの業務に携わった。日本向けの市場開拓で、大学時代の米国留学で身につけた英語力を生かし、英国人に囲まれて働いた。
「日本での残業を考えると、イギリスは天国でした。定時で本当に帰って良いのかなと思い、最初は上司にいちいち確認をしていました。午後4時半で退社する人もいました」
大島さんは同社で1年3カ月働いたが、突然の大量解雇に遭った。その後、職探しをしばらく続けるも、就労ビザを発給してまで雇ってくれる勤め先は見つからなかった。日本に帰国すべきか否か。ある日、スペインの企業から声が掛かり、今年10月に移住した。
「海外の場合は働きやすい環境でも、大量解雇があったりと、残業がある日本と比べれば一長一短ですね。それでも海外で働きたいのは、刺激を感じられるから。日本は便利だし、街も綺麗ですが、生活が想像できてしまう。でも海外なら日々、新しい発見があるんです」
海外へ飛び出せば必ずしも「正解」が得られるわけではないだろう。渡航先の事情如何で日本より厳しい環境が待ち受けているかもしれない。
それでも、日本の将来を憂いたり、海外への「無限の可能性」を求めたりしながら、日本の若者たちは旅立つのである。