「Facebооkを通じて見つけた仕事で、日当は200豪ドルと紹介されていました。ところが実際の支給額は45豪ドルほど。現場監督の担当者からは『今はラズベリーが成長していない。成長したらもっと稼げるようになる』などと説明を受けましたが、納得いきませんでした」
1カ月で別のファームに移ったが、そこでも同様の対応を受けた。
「働いた時間分の給与がもらえなかった。文句を言うと現場担当者から『クビにするぞ』と伝えられた同僚もいたので、何も言えませんでした。中古車を買うなどで貯金が底を突きかけていたという懐事情もあり、理不尽だとは思いながらも辞められませんでした」
田部さんによると、ファームでは同じような経験をした日本人が少なくないという。
立ちはだかる語学の壁
「ガッツが足りない」若者たち
アジアならまだしも、英語を母国語とする欧米で働く際、日本人がまずぶち当たるのが言葉の壁だ。
一般的には語学学校に数カ月を費やし、そこから仕事探しが始まる。もっとも、日本でどれだけ準備をしたかにもよるが、たった数カ月でビジネスに通用する英語力を身につけるのは極めて難しい。日本のスターバックスでのアルバイト経験を生かし、カナダでもスタバで働いた帯広畜産大学4年生の須田泰地さん(23歳)は、店舗で唯一の日本人だった。
「日本と異なっていたのは、とにかくお客さんとコミュニケーションを取るようにマネジャーから言われたことです。でも相手の話すスピードが速すぎて聴き取れない。それが悔しくて仕事が終わったら毎日、図書館で2時間ほど勉強しました」
こうした環境を避けて日本人同士でつるみ、ワーホリが終わっても英語が身につかずに帰国する若者は一定数いる。もっとも、ワーホリ期間中は原則、何をしても自由だから、日本語だけで生活しても問題はないし、必ずしも働く必要もない。要は「ワーホリに何を求めるのか」という目的意識が現地での行動を左右するのだ。ただ、働くとなれば、英語ができないと職種は限られる。
「多くの日本人が就く仕事は、飲食を含むホスピタリティー業界です。他にはホテルのベッドメイキング、清掃、ファームでの仕事など。最近はUberの運転手といったギグワーカーも増えています」
こう語る松久保代表が、ワーホリで渡航する日本の若者たちを何千人と見てきて、気づいたことがある。
「そもそも、ガッツが足りないと思います。1年たったら帰ると決めているため、他国籍のワーホリの人と比べると、海外でなんとか成功しようという気概が感じられません」