林野庁は日本の森はかつてないほど成熟しているというが、実際に林業地を歩くと広大な皆伐跡地が広がっている。しかも伐採や搬出用の高性能林業機械を山に入れるため林道や作業道が建設されるが、それが表土を破壊している。だから大雨が降れば急峻な山肌はよく崩れる。
さらに崩壊で土壌が失われたら再造林するのは至難となり、森が再生するにはとてつもなく長い年月がかかるだろう。結果、林業地は減少しているのだ。
もう一つ重大な問題に、違法木材がある。現在、国際的に木材の出所や合法性は厳しく追求されるようになった。違法な伐採が炭素固定や生物多様性など地球環境に悪影響を与えていると指摘されたからだ。そうした木材の流通を厳しく規制しようとしている。
ところが日本には、違法木材の流通を禁止する法令は実質的にないのだ。クリーンウッド法は、合法木材の推進を求めているだけで、違法かどうかを確認しないし、仮に違法木材を売買しても罰則はない。さらに国内でも盗伐は全国的に頻発している。クリーンウッド法の登録業者が、他人の山を勝手に伐採していた事件もあった。
まずはトレーサビリティの確立を
このような事実を追いかけていると、まったく絶望的になる。本当に木造建築で地球環境および地域振興への貢献を考えるなら、まず木材のトレーサビリティを確立して違法および合法と証明されない木材は利用しないことが第一だ。
違法木材を追放すれば、真っ当な国産材需要が高まり、木材価格も上がるだろう。高ければ無駄な使い方を抑えて歩留りは上がる。林業家も経営意欲を増して森林の持続性は高まるだろう。
とにかく木材を使いさえすればよいという雑な発想ではなく、林業・木材産業、そして建築業が一体になって、ていねいに緻密に木材利用に取り組むべきである。