しかし、中国は、多くの大量殺害や殺傷で動揺している。専門家は社会的緊張の激化が原因だとしている。
昨年11月に珠海市で群衆に車で突っ込み少なくとも35人を殺害したことで有罪となった男に対し12月下旬に死刑判決が下った。これは過去10年間で最悪の大量殺害だ。
長期の祝日を控え、中国政府は地方政府に対し失業中の若者を含む経済困窮者への季節的現金給付拡大を要請した。現金給付の中国経済全体への影響は限定的だが、貧困地域での社会的安定と消費には一定の補強材利用になるだろう。
中国経済の見通しは、対米関係緊張で一層軟化している。バイデン大統領の元で米国はコンピューター・チップへの中国のアクセスを制限し中国の対米投資を制約しロシアのウクライナ本格侵攻後、ロシアと取引のある中国企業への制裁を強化した。中国国営新華社が報じた新年の演説によれば、同日、演説の前に習はプーチン大統領に対し、彼らの指導の下中露の戦略的調整は一層高いレベルに達すると述べている。
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主な内容は台湾と経済の2本立て
「新年の挨拶」は、2013年3月の第1期習近平政権発足後、同年12月末に初実施されて以降恒例だ。時間は10分程度とそれ程長くはないが、習が肉声で前年の総括と今後の政策について語る貴重な機会で注目されてきた。
過去の「挨拶」は、その内容のみならず、背景や机上に置かれた写真や置物などの「小物」の意味の解釈についても話題を提供してきた。一方、今回は、背景は全面的に万里の長城の絵で中国国旗が置かれているのみで、小物も置物も何もない。挿入されたビデオ・クリップは、電気自動車等の技術革新や、宇宙・海底探査等の活動に関するもので、挨拶本文で強調されている「成果」と呼応している。
従来は掲載されていた外国首脳との写真もない。少し穿った見方をすれば、今回は、あいさつの「内容」に注目してほしい、との習の希望を反映しているのかもしれない。
内容は、具体的には台湾と経済の2本立てだった。
台湾については、「両岸統一は歴史の必然」とした昨年の内容をなぞり、血の紐帯を強調するもので、特段新しい内容は無い。頼成徳台湾総統も翌日に「新年の挨拶」をしたが、その内容は、両岸関係の平和と安定を呼び掛け、それに対する挑戦に対し国防費増額、防衛能力強化等を通じ準備すべき旨呼び掛けるものだった。
これらの背景にあるのは、トランプ新政権の台湾政策の行方が未だ不明確なことだろう。トランプ第一次政権は、対台湾武器供与を増やし、大統領就任時に台湾総統に電話したり従来に比べて高いレベルの政府高官を派遣したりした一方、中国とのディールを重視するトランプ大統領が台湾の防衛自体には関心が無いことを示すいくつかの発言が報じられてきた。