2025年2月11日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月22日

 12月31日付けフィナンシャル・タイムズ紙は「習近平は成長が優先事項としつつ、制約を認める」との解説記事を掲げ、習近平による恒例の新年の演説につき解説している。要旨は以下の通り。

中国の習近平国家主席による新年演説からは、「不安」も垣間見える(新華社/アフロ)

 習近平主席は、新年の演説で高齢者と若者への支援を強調したが、国民の一部には制約があることを認めた。習の演説は、中国の経済計画者達が過去4年間のほとんどを、消費者心理の回復と若年失業の増加、賃金上昇の鈍化への対応に費やしたことを受けて行われた。

 31日夕刻にテレビ放映された演説で、習は、雇用、収入増、高齢者介護、子供、教育、健康管理等の問題は常に自分の頭の中にある、7月の中国共産党指導部会合で包括的改革深化の必要性が強調されたと述べた。

 国民の幸福な生活実現が最大の優先事項だと彼は言う。全ての家庭は、子供達が良い教育を受け高齢者が良い介護を受け若者がより良い発展機会を得ることを希望している。

 中国経済は米国に次ぐ世界第二の規模で、昨年の最初の9カ月で4.8%成長したが、政府公式目標の約5%には及ばなかった。疫病や数年続く不動産市場低迷、商業活動の太宗を共産党が管理するとの習の再確認といった多くの打撃の後、消費者心理の冷え込みとデフレ圧力が生じた。

 新年の演説で習は、国際社会の台湾支援にもあからさまな警告を繰り返した。中国は台湾への主権を主張しており、台湾が統一を拒めば武力を使う可能性を排除していない。

 台湾海峡両岸の同胞は一つの家族だ。誰も我々の血の繋がりと血族関係を断つことはできず、国家統一に向けた歴史的流れを止めることはできない、と習は述べた。

 習は、ハイテク産業や製造業への国家支援を一層強化し、重要技術の国産化を進める一方で、EV、電池、半導体、AIへの投資を増やしている。新年の演説で彼は技術的自立進展とコンピューター・チップ、AI、宇宙探査を含む諸分野での技術革新を強調。7月以降の中国政府による財産や株式市場への支援を含む各種の政策緩和は、習政権が国内消費刺激へ舵を切った証左と見られている。これらの変化を反映し先週世銀は来年の中国の国内総生産(GDP)成長率予測を0.4%引き上げ4.5%とした。


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